フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み/プレジデント社

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企業変革とイノベーション

・「どうやったら他の社員の意識を変えられるか?」という問いは捨てて、「自分は新しいパラダイムに変われるだろうか?」「このアプローチを成果が出るまでやり抜く情熱を持ち続けられるだろうか?」と自分に問いなおしましょう。他人を説得することを手放すと、自分自身がやらなければならないことがまだたくさんある、ということに気づくでしょう。「イノベーションが起きますよ」という説得をするよりも、「本当にイノベーションを起こせるだろうか」という自分自身の心の問いに向き合うのです。(p37)


「儲かりますパラドックス」

・では、どうスタートさせればよいのでしょうか。それは、「目的を再定義する」ことを最大の目的に据えることです。もし「儲かるのか?」と問われたならば、「儲けようと思うから儲からないんです、市場は縮小しているんです」と正面からうけとめましょう。そして、「社会的インパクトを必ずだします、企業価値を高めます」と続けて言い切ります。目標を儲けることから企業活を高める事へ定義しなおすのです。あくまで正論を貫き通すことで、イノベーションの種が窒息しないよう、空気穴を開けておくことができます。
 イノベーションを起こすのは、容易ではありません。新たな価値の発見のみならず、それを提供できるように、社内変革も同時に実行しなければなりません。社会的価値の理想を掲げ続けることで、社内の意識が変わります。これこそ、イノベーションををねらったプロジェクトを成功に導くための必要条件なのです。(p49)

・フューチャーセンターは、「独創的(クリエイティブ)」な発想でセクターの壁を超え、「対話(ダイアログ)」によってセクター間の新たなつながりを生み出します。そのつながりのなかで、企業と社会起業家が手を取り合って、一緒に社会と市場を変革し、新たな産業を生み出していくのです。(P51)


賢慮型リーダーシップ

・フューチャーセンターには、きわめた強力な「思想」があります。「世界観」と呼んだ方がしっくりくるかもしれません。その世界観とは、「世界は私たち1人ひとりの関係性でできあがっている」というものです。(中略)
 フューチャーセンターでは、このように考えます。
-社会や市場のエコシステム(生態系)をつくっているのは、私たち1人ひとりの関係性である。
-今日この部屋にいる100人がネットワークするだけで社会は変わる
-「未来のステークホルダー」を選ぶ(誰とネットワークするか)のは、私たち1人ひとりの意志である
-社会イノベーションが起きるかどうかは、私たち1人ひとりの行動の結果である
-このような考えを具現化したのがフューチャーセンターである(p54)


フューチャーセンターの「6つの原則」

(1)フューチャーセンターでは、思いを持った人にとっての大切な問いから、すべてが始まる
(2)フューチャーセンターでは、新たな可能性を描くために、多様な人たちの智恵が1つの場に集まる
(3)フューチャーセンターでは、集まった人たちの関係性を大切にすることで、効果的に自発性を引き出す
(4)フューチャーセンターでは、そこでの共通経験やアクティブな学習により、新たなよりよい実践が創発される
(5)フューチャーセンターでは、あらゆるものをプロトタイピング(試作)する
(6)フューチャーセンターでは、質の高い対話が、これからの方向性やステップ、効果的なアクションを明らかにする(p61)


関係性を生む対話

・フューチャーセンターで行われるセッションでは、次の「4つのステージ」を明確に意識して進めます。
ステージ1:尊敬と信頼に基づく関係性構築
ステージ2:深い対話によるダイナミックな相互作用
ステージ3:多様な方法論による未来志向
ステージ4:プロトタイピングによる協調的アクション(p96)

・少し「特別な場」を感じてもらうために、フィッシュボウル(金魚鉢という名前で呼ばれる、パネル討論に近い雰囲気の対話の方法論)などを使って、適度な緊張感のなかで対話の場をセットするとよいでしょう。(p100)


本書のまとめ

【フューチャーセンター】
 組織を超えて、多様なステークホルダーが集まり、未来志向で対話し、関係性をつくる。そこから創発されたアイディアに従い、協調的アクションを起こしていく、そのための「つねに開かれた場」が、フューチャーセンターです。フューチャーセンターがコミュニティに開かれていることで、そのテーマや地域、組織のステークホルダーが、自発的に対話に参加したり、解決を持ち込んだりすることができるようになります。
 わかりやすく言えば、フューチャーセンター・セッションがひつも開かれている場所がフューチャーセンターなのです。ハコモノのフューチャーセンターありきではなく、未来に向けた対話を繰り返していくうちに、いつの日か周囲の人が「あそこはフューチャーセンターだ」と呼び始める。そのようなイメージを持って、フューチャーセンターというものを捉えて下さい。(p158)

【フューチャーセンター・セッション(またはフューチャー・セッション)】
 フューチャーセンターは、多様な人をインプットすれば、問題解決がアウトプットされる自動販売機のようなものではありません。いちばん大切なことは、フューチャーセンターに参加した人自身が、自らのあり方を見直し、いままでよりも、もっと広いステークホルダーの存在を意識して問題に取り組むようになることです。自らの視野と経験の拡大により、まったく異なる立場の人の行動を変えることで、イノベーションが生み出されます。
 多様なステークホルダーが集まって対話をする場をフューチャーセンター・セッションと呼びます。フューチャー・セッションと略していただいても構いません。フューチャー・セッションは、未来に向けた対話を行う場で、短くて3時間くらい、長ければ数日掛けて行うワークショップです。もちろん、1回で終わらせずに、継続して同じテーマを推進していくことが大切です。なぜならフューチャーセンターの目的は、集まることそのもの、対話そのものにあるのではなく、対話を通してアクションを起こし、複雑な問題を実際に解決することにあるからです。