プライドが高くて迷惑な人 (PHP新書)/PHP研究所

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目次
第1章 あなたのまわりの「プライドが高くて迷惑な人」 p17
第2章 どんな特徴があるのか p53
第3章 なぜ、こういう人が生まれるのか p89
第4章 どんなふうにつき合えばいいのか p125
第5章 処方箋 p159
第6章 自分がそうならないために p189



「現実原則」にもとづいて行動できず空想に逃げ込む

・「空想すること」について、フロイトは、
 「第一に幸福な人間は決して空想しない。空想するのは不満な人間だけである。みたされなかった願望こそ空想を生み出す原動力であって、空想というものはどれもこれも、願望充足であり、人を満足させてくれない現実の修正を意味しているのである」
 と述べている。(p95)


別の見方もできることを示唆

・この事例からわかるのは、誰かを説得するには、まず相手の気持ちやものの見方をきちんと理解していることを伝えることから始めなければならないということだ。そのうえで、「理解はしているけど、同意しているわけではない。誰にだってそえぞれの見方や考え方、場合によってはそれなりの事情がある」と伝えられれば、お互いに意固地にならずにすむはずである。(p131)


他人の意見や助言を聞かない人への対処法

・良かれと思って助言しても、向こうが聞き入れないこともあるだろう。私も精神科医として患者さんや家族の方に助言しても、受け入れていただけなくて困ったことが何度もある。そのときの経験から言えるのは、そういう場合はいくら説得してもムダだということである。
 では、どうすればいいのか?私は次のように言っている。
「~したほうがいいとは思うけど、他人の私が100%あなたの立場に身を置いて感じたり考えたりできるわけではないですよね。まあ、助言を受け入れて実行するかどうかを決めるのはあなた自身なので、強制しません」
 こういう言い方は少々冷たいように聞こえるかもしれないが、プライドの高い方に対しては結構有効なようである。しばらくしてから、「~することにしました」と報告を聞くことが少なくない。
 どうも、「助言を受け入れて実行するかどうかを決めるのはあなた自身」というのが決め台詞のようで、他人から言われたから自分のやり方を変えたわけではなく、あくまでも自分で決めて実行したのだと自分に言い聞かせることができるためらしい。
 もちろん、診察室での医師―患者の関係と、職場や家庭での人間関係は別物なので、一概には言えないものの、「プライドが高くて迷惑な人」に対しては、顔をつぶさないようにしながら、こちらの意見や助言を押しつけるのではなく、ほのめかす程度にしておく配慮が必要だと、つくづく思うのである。(p186)


自分を知る

・まず、他人の話を聞くこと、ときには進んで他人の意見や助言を求めることである。批判されることもあるかもしれない。それでも、そういうことを向こうがあなたに伝えてくれたこと自体に、それなりの意義と価値があるのだと受け止める姿勢を保つべきだ。
 もちろん、全部真に受ける必要などない。中には、あなたをけなして自信を失わせようとするような人間だっているかもしれないのだから。あなたが耳にした意見や助言、ときには批判を受け入れるかどうか決めるのはあなた自身である。(中略)
 ただ、勘違いのもとになりやすいズレを修正するためには、やはり他人の話を聞くしかない。逆説的な言い方だが、他人の意見や助言を選り分けて、切り捨ててもかまわないと判断したものを聞き流せるようになるためにこそ、できるだけ多くの人の声に耳を傾けることが必要なのである。(p194)


感情を否認しない

・病気になったらつらい思いをするし、「イケズ」をしたら自己嫌悪にさいなまれるし、キレたら人間関係が悪くなる。そういう困った事態に陥りたくなければ、負の感情であっても否認せずに、それも自分の感情なのだと受け入れていただきたい。
 そのうえで、そういう感情を溜め込まないように小出しにしていくことが必要になるが、そのためには自分の感情を言葉で伝える練習を積み重ねなければならない。とくに怒りや悔しさは、何かうまくいっていないことがあるというサインなので、きちんと言葉で伝えることによって、それを引き起こした相手の言動を少しでも変えることができれば、キレずにすむはずである。
 その際、何に対して怒りや悔しさを感じたのかを見きわめる必要がある。もし、自分はこんなスゴイと思っているのに相手が認めてくれなかったとか、自分としては特別扱いしてほしかったのにその他大勢と同じように扱われたとか、相手を支配したかったのに自分の思い通りにならなかったということに対してだったら、自分が「プライドが高くて迷惑な人」になりかけていないか、わが身を振り返らなければならない。
 そのためにも、自分の中にあるとは認めたくない負の感情ほど、否認せずに自覚すべきだ。とても厄介だけど、そうしなければ、抑圧した感情がゆがんだ形で突然出てきて、あなた自信亜g困ることになるのだから。(p198)


失敗はつきものと考える

・自分の弱点を受け入れると同時に、失敗はあって当たり前というふうに考えることも必要である。もちろん、誰だって、失敗なんかしたくない。だが、何かを始めよう、何かを変えようとしたら、失敗するリスクは常につきまとう。リスクゼロということはありえない。
 なので、何としても失敗を避けたいなどと思わないほうがいいだろう。もちろん、失敗しないように努力を積み重ねることも必要だが、絶対失敗してはいけないと肩に力が入りすぎていると、かえって失敗するものである。そうなれば、自己愛が傷つかないようにするために、自分の失敗を隠蔽して他人のせいにするようなことだってやってしまうかもしれない。
 むしろ、人間である限り失敗はつきもので、失敗したときにどう対応するか、どんなふうにして乗り越えるかによって成功できるかどうかが決まるといふうに、発想の転換をしたほうがうまくいくはずである。
 発想の転換をするには、まず何よりも、勝利か敗北か、成功か失敗かの二元論的考え方を捨てることが必要である。(中略)
 大切なのは、失敗しても乗り越えられたという経験を積み重ねることである。失敗を克服した経験があれば、自信がついて、失敗を過度に恐れることがなくなり、畏縮せずにいろいろなことに挑戦できるだろう。(p204)


地道な努力の積み重ねで自尊心を保つ

・結局のところ、「経験によって強化された全能感」もしくは「対象リビドーの満足」を大人になってから持てるように、経験を積み重ねたり、良好な人間関係を築いたりすることができるかどうかにつきる。
「対象リビドーの満足」は相手次第というところがあるが、「経験によって強化された全能感」は日頃の努力の積み重ねによって何とかなる。なので、あなたが今いる場所で、地道な努力を続けて自然に認められるようになるのが、「プライドが高くて迷惑な人」にならないための最善の方法なのである。(p210)