*あくまで個人の考えです。

数日前に京都大学の理学部・工学部の「特色入試」に「女子枠」を導入することが発表され、話題になっています。

数理系・理工系は大学入学後、そして卒業後も大学入試で培う数学・理科の能力が必要な分野です。また、大学入学以降に身に付ける専門知識は、高校までの数学・理科の能力という土台があって初めて意味があるもので、その土台が不充分ないし低レベルだと、その上に建てられる構造物もそれ相応の物になります。大学入試は、その土台を整える絶好の機会なのですが、それを蔑ろにして良いというメッセージを発するのは止めた方が良いと考えます。

「女子枠」を推進する人たちがよく口にする「多様性」ですが、それは「ある基準以上に能力が揃った上での多様性」でないと困ります。どこぞの*工業大学の学長のインタビューになぞらえて書くと、野球チームを構成するのに異なる能力・スキルの選手は必要ですが、「10m先までボールが投げられない選手」とか「100mを走るのに30秒かかる選手」だと、他の能力が高くともチームプレイの足を引っ張ります。個人技で革新的な発明・発見ができた時代ならいざ知らず、今はチームプレイで何かを成す時代です。一般の大学入試を経験されていない方にはその意味と価値を理解するのは困難かもしれませんが、「最低限これ以上の能力を持っていて欲しいという基準」が大学入試の学力試験だと思います。



話は変わりますが、一般入試の学力試験で入学する学生の比率がどんどん下がっている昨今、学歴(最終的に卒業した学校)だけでなく、大学入学歴の「シグナル効果」も減衰しています。

私立大学出身者で、一般入試で入学した人の口から、「自分は一般入試で入ったんで」(非学力入学組と一緒にしないでくれ、の意味)という言葉をしばしば聞くことがあります。確かに「一般試験だったら合格できない学力の、同じ大学の学生」と同類扱いされるのは屈辱だと思います。そういう人の為にも、区別する方法が必要かもしれません。

大学の入試が多様化している現在の状況に対応する為、大卒採用者の履歴書やエントリーシートに、

□一般入試
□内部進学
□推薦入学
□総合型選抜
□その他(____________________)
□無回答

みたいな、大学入学の経緯を記入する欄ができる日も遠くないかもしれません。もっともこれを作ったら「差別だ」と批判する、差別と区別の違いが分からない人間が湧いてくるのは想定できるので、最終的には大学入学試験相当の学力試験が導入されるかもしれません。
これは露骨に「学力試験」と銘打たなくても、SPI試験などの検査の問題のレベルを上げるだけで簡単に対応できます。今以上に、たかがSPI試験だと一蹴できる求職者と、SPI試験を通過できない求職者の「格差」が拡大するでしょう。

その意味で、「学歴社会」だと批判してきた人たちにとっての理想社会は、すぐそこまで来ています。そしてそれは、実力のある人間が勝ち残る社会でもあります。学歴(学校歴)不問の採用にしたら、採用者が世間でいう最難関大学の出身者だけになった、という話は珍しくもありません。

「実力社会」に対応する為にも、大学入試くらい真面目に勉強して、一発勝負の試験をくぐる経験をした方がいいよ、と自分は思います。

ご参考