(1)居宅介護支援事業所への期待
某医療機関が別法人を作って訪問看護を行い、その後居宅介護支援事業所を併設。良くある話だと思う。ところが居宅介護支援事業所が3カ月たったころ、業績悪化を理由に閉鎖するという。まあ、それはそれで良くある話だし、その後のエピソードで訪問看護が業績悪化の理由がケアマネが訪問看護に利用者を回さなかったとか、好き勝手なことを言っているのも良くある話。
サービス事業所がある時、その利用者確保の為に居宅介護支援事業所が必要と言うのは、この制度が始まってから当たり前に言われていた事。
それは例えば地域包括に介護相談が来た時も、訪問看護が必要な利用者であればその訪問看護を持つ居宅介護支援事業所に依頼しやすいというのもあるからだ。
本来であればサービス事業所単体でも事業が成り立つはずである。特にこの記事のような医療機関が設置している訪問看護であればなおさら。その医療機関に受診した人、特に高齢者がそのまま訪問看護を依頼することだってあるからだ。それだけ医療機関と言うのは高齢者にとっても存在感があるという事である。
(2)居宅介護支援事業所の経営は
居宅介護支援事業所ははじめは赤字運営が当たり前である。ケアマネ一人当たり45人の利用者を持つことが出来るとあるが、最初から何十人もいるわけでは無い。はじめは数人、徐々に増えていって、順調にいっても半年~1年はかかるだろう。
だから訪問看護のいう、居宅介護支援事業所を作ったら赤字が増えたと言うのは当然である。それではなぜそんな赤字を増やすようなことをしても居宅介護支援事業所を作るかと言えば、そこから来るサービス事業所への期待があるからだ。
しかしこれも居宅介護支援事業所を設置したから、サービス事業所も万々歳というわけでは無い。期待する程利用者が増えるわけでは無い。
先ほど述べたように地域包括支援センターでも医療サービスや医療依存が高い人は訪問看護が必要な人を訪問看護に併設されている居宅介護支援事業所に依頼するというのはあるが、その医療機関に来る人は訪問看護が必要な人ばかりではない。おそらくその医療機関に居宅介護支援事業所の案内はあるだろうから、訪問看護が必要でない人も依頼に来ることもある。
(3)介護業界で働くのは綱渡り
この記事のように、サービス事業所にとっては居宅介護支援事業所はサービス事業所への呼び込みとして期待されていることが分かる。そして、その期待にそぐわない時、民間であるがゆえに簡単に切り捨てられる。
このように淘汰されながら業界と言うのは育っていくものだろうが、そこに犠牲になるのは高齢者である。
そしてこの居宅介護支援事業所の管理者も心労がたたるだろうと思う。まず、廃止をいきなり言い渡された事。訪問看護が自分の悪口を言っていること。そして利用者を振り分けないといけない事。残務処理を素早く行わないといけないというプレッシャー。
この管理者が独立して利用者を引き続き担当するか、利用者を抱えながらどこかの居宅介護支援事業所に就職するのが望ましいのだろう。
何らかの形で解決するのだろうが、サービス事業所もそこで働く職員も綱渡りのような状態で働いているという一例であろう。