(1)新緑の季節に思う
桜の季節があっという間に過ぎ、街には新緑のまぶしい季節になった。春が過ぎれば夏が来る。暑さに弱い私はそれだけで鬱陶しくなる。
学生の頃は、新学期の4月を終え、何となくの緊張感が無くなり、何となく新しい生活に慣れる頃という時期になるだろうが、当時はその「慣れ」というものが嬉しくもあったというか、馴染んできたというか。何となくの落ち着きの季節ともいえるのが5月だろうと思う。
(2)でももう花はいらない
この歌に出会ったのは高校の時だった。当時、CDが出始めたころで最初の頃に買ったものだ。
「緑の髪に胸を躍らせ歩いた学生時代は夢のように過ぎて終わった。その時に落としてきた陰りのない心も見えない」
ここの部分の歌詞は当時はそんなものかなという程度に思っていたが、今、50代も半ばになると学生時代が夢のようであったという表現はまさに理解できるものである。
社会人になって振り返った時に、学生時代という過ぎていった時代が良いものだったかそうでないかは色々あるだろうが、確かに思えば夢のようでもあると思う。
「今は欲しくはない。花なんて大人に似合いはしない」
社会人になると、学生時代に経験しなかった厳しさに出会う。それは嫌な上司であったり、思い通りにならない仕事であったり。そんな事を考えてしまえば、周りきれいなものも目に入らない。
私も春の桜を見上げて良いな、と思うようになったのは最近である。それまでは桜が咲いていても、それを見て浮かれている人を見ても何の感情も無い、無機質なセピア色の風景だったと思う。だから花なんていらない。大人に花は似合わないという、強がりでもあり、思い通りにならない気持ちにとらわれた時、実は本当はきれいなものを見て良いなと思える素直な気持ちが欲しいし、忘れたくないし、そう思えない自分が嫌だし、とかなり複雑な心境を吐露しているフレーズが、その当時の自分にも刺さったのを覚えている。
(3)めぐる季節の中で
ベランダから見える風景もすっかりと5月!というものになった。まだ朝夕は寒く、夏にはまだ時間があるが、確実に季節は動いている。
そしてまた一つ年を取る。
青春を振り返った時に思い出す一曲であり、学生時代から社会人になり、その時に経験した荒波に目を伏せ、顔も上げられない程苦しかった時代をも思い出すのだ。
本当は好きな花の一つでも言いたいところだが、「花なんて大人に似合いはしない」