大学の入学が決まった19歳の春。
1年間の受験戦争が終わった。結果は合格。生まれ育った東京を離れて地方に行くことになった。
寂しい思いがないわけではない。合格したとはいえ10校受験して1校だけの合格だった。しかも地方。東京の大学への思いがないわけではないが、この結果は受け入れることにした。
バイトもして、何となく気持ちも落ち着いて充実している春休み。受験に失敗して打ちひしがれていた絶望しかなかった去年の春。1年越しにそんな平和な日々を過ごしていた。
そんな何となく春風のような温かさを感じる頃、この歌に出会った。
東京での生活もあとわずか。
初めての引っ越しは、慣れ親しんだ東京との別れである。そう思うと道行く風も感慨深かった。
今まで親しんでいた人ともお別れだ。
自分の意思で選んだ道なのに、自分で切り開かなくてはならないのに、その勇気が無かったのだろう。
そういう気持ちは時間が解決してくれた。
地方での生活は私の人生に大きな癒しや刺激、潤いを与えてくれたからだ。
今でも3月と言うのは基本的に好きだはない。
1年間無事に過ごせたことのホッとした感情が過ぎ行く3月という月を惜しんでいるのかもしれない。
もうすぐ4月だがワクワクするような感情はない。流れゆく時の中で静かに過ごしている。