グループホームやお泊りデイサービスなど、宿泊サービスを伴うサービスにおける人員基準。複数名の宿泊利用者がいる場合でも職員が一人で対応する事がある。
このケースのように、帰宅願望や不穏になる可能性が高い利用者が複数名いる場合は一人で対応するのは当たり前だが無理。
とはいえ、二人分の人件費は出ないし、シフトにも影響する。
【このケースの登場人物】
①Aさん(92歳 男性 アルツハイマー型認知症)・・・夜間にせん妄を起こす。せん妄とは意識が少し混濁した状態で、いわば目を開けていても頭の中は半分眠っているような状態。
②Bさん(82歳 女性 血管性認知症)・・・まだグループホームになじめず、「私、家に帰らせてもらいます」と何度も玄関に来る。
③Cさん(54歳 男性 若年性アルツハイマー)・・・昼夜逆転
④介護士
【経過】
Aさんの夜間せん妄が午後10時ごろから激しくなり、グループホームの居室からリビングルームのほうに出てくる。
Bさんの帰宅願望が強く、何度も玄関に来る。
Cさんがこの日に限り大声を上げる
そこで介護士は両手でBさん、Cさんを押さえながら、「ごめんねAさん、手が足りなくて」と言いながら、つい突進してくるAさんを、右足を上げて制しようとした。転倒を防ぎたかったのである。しかし運悪く足をあげたときにバランスを崩しAさんの股間に勢いよく当たってしまい、Aさんは転倒して、大腿骨の首の部分を骨折してしまった。
その後、Aさんの家族から「虐待された」との告発があり、介護士さんはグループホームをやめることになり、今でも係争中。(文中より)
さて
どうすれば良かったのか、という議論はいろいろあると思う。
原因も複数あるだろう。
ただ思ったのが、介護の世界はまだ訴訟に慣れていない。
なぜか?
福祉の世界は清廉潔白なもの、という先入観があるものと思う。いわゆる性善説である。
介護職になるのも、人の役に立ちたくて、とか、親の介護をしてその経験を生かしてという人も多い。つまり、善意からこの仕事に入っている。
しかし、介護・福祉の世界はきれいごとだけでは済まない。
もしかしたら、もっとドロドロした汚い世界かもしれない。
だから、きれいごとではなく、もっとリアルに対処法を教えて欲しいと思う。なので、弁護士の講師の研修の方が話を聞いて役に立ったと思う場合が多い。
別に性悪説に立てとは言わないが、人として良い面、悪い面両面から見ないと見誤ることがあるように思う。
