私の母は 間もなく91歳を迎えますが、

敬老の祝いは無用 と言います。

母は 近くの小さなマンションで 一人で 暮らして

います。

10年前に 父が亡くなってから 福岡の家を処分して

少しの荷物を持って 80歳にして 始めての 関東での

一人暮らしが 始まりました。

母は 物への執着が 全くありません。

父が亡くなり 福岡の家を処分する時も 業者を

呼んで、 ほとんど チェックもしないで 思い切りよく

荷物を処分しました。

中には 多少 高価な物もあったし、 私の残していた

荷物も処分してしまい、後で ちょっと もったいない

わねと 私は 文句を言ってしまいました。

今で言うキャリアウーマンだった母は32歳で 四つ年下の

父と恋に落ちて 結婚しましたが、結構苦労したみたい

です。

でも どんなに大変なことがあっても 母は父のことを

心から愛していたんだなあと 感じさせられます。

父は 若い頃 特攻隊に志願しました。

そんな 父の熱い情熱や 優しさ、そして 一度 生命を

捨てた 父の潔さに 惚れ込んだのでしょう…

現実の結婚生活での苦労や 父の やんちゃぶりも

許せたと 言います。

父が晩年 痴ほうを患っても、 忙しい銀行員だった父

が やっと 自分の元に戻ってきたと、決して 施設には

入れようとせず、 年老いた母は ひとりで 世話をして

いました。

父は 痴ほうを患っていても 亡くなる前日に、 母に

ありがとう、ありがとう と 繰り返し 言ったとか…

母は 最後まで 父に寄り添い、父も そんな母に 感謝

して 逝ったことでしょう。

父に尽くした母は すごいなあと思いますが、

母にそこまで 思わせるものが 父にもあったのだと

今 つくづく 思います。

母は いつも、 死ぬまで 誰かの役に立っていたいと

言います。

足腰は だんだん衰えて 耳も遠くなり、目も弱って

いますが、まだ ひとりで 自立した生活をしている

母を 心から尊敬します。

そして ひとりでの暮らしが 無理になったら、

堂々と 子供や 人の助けを 求めて欲しいと 思います。