【 7 】
12月 24日 16:50
畑山は自分が団体構成員であることを口に出さなかった。
それは出麹にとって、都合の良いことであった。
公然と自らの信条を口にする人間を転ばせるのは難しい。
出麹はターゲットと、草野球や日常の接触を通じ、親密になったところで一気に攻めようと思っていた。
「脅迫」の道具として、畑山とは意図的に二人で映った写真を撮っていた。
畑山が出麹の肩に手を回した写真もある。
出麹は蛇の如く、じっくりとタイミングを計っていた。
だが畑山と親交を深めるにつれ、出麹はイライラを募らせていた。
-真面目で自尊心が強い-
教師にありがちな畑山の性質は、出麹にとってはクソ食らえであった。
前述の新潟赴任前、出麹と職場を共にした人間はこう言う。
-出麹、やつは少なくとも、『正義』や『倫理』の為に警察に入ってきた輩ではないですよ-
-あいつの切れ長の瞳には、およそ警察官に似つかわしくない、何か得体の知れない衝動が宿っている-
出麹は日増しに息が詰まる思いであったが、それでも完璧に後輩ヅラを演じ続けていた。
ある日、出麹は畑山と共に沢村泰介を夕食に誘う。
元高校球児であり、潮風シャークスのキャプテンでもある沢村は、出麹と畑山によく技術指導をしてくれていた。
沢村は気さくで面倒見のいい性格であり、快活な人間であった。
彼を交流の輪に入れることによって、幾分か出麹のストレスが軽減された。
また、沢村を輪に入れるもう一つの予想外の利点があった。
どうにも畑山は、器量と胆力のある沢村に対し、多少の引け目を感じていたようであった。
畑山は時折、沢村に対する批判めいたものを口にしていた。
当然愚痴の捌け口は出麹であり、それは出麹にとって畑山との距離を一層縮める良い契機ともなった。
-計画は狙い通りに進んでいた-
出麹は舌打ちした後、運転手に沢村家へ急ぐように告げた。
・・・・・イッタイナニガオキタ・・・・・