♪もしも、ピアノが、弾けたなら

 

なーんて歌がありましたが、

うちには誰も弾いてないまま、

それでも調律を繰り返しているピアノがあります。

 

マンガのようですが、私には小金持ちの大叔母というお方がおりました。

「もしもピアノが弾けたなら~」と思うタイプだった私の父親が

大叔母から古いピアノをもらい受けることになったのです。

娘に習わせたらよかろう、と。

 

幼稚園にあるのも足踏みのオルガンの時代。

 

通っている幼稚園で「ヤマハオルガン教室」というのがありました。

各教室に置いてあるオルガンを、教室の時だけ一部屋に集めて、

集団で習う、というお教室。そこに通いました。

 

一緒に来ていた母も、ちょっとは弾けるようになりました。

左手の伴奏はドソミソの連続とかなら。

 

幼稚園を卒園してからは、

従姉にバイエルを習いました。

引っ越しで従姉とも離れたため、

とうとうピアノ教室に通うこととなりました。

 

 

小さいころは何度か引っ越しがあり、

そのたびに、くっそ重たいピアノも私といっしょにくっついてきました。

団地の3階とか、団地の5階とかでも、しょうがないので、

ピアノは父や父の友人が、人力で揚げてくれました。

 

団地に住んでいるのに、ピアノを習うというのが、

そもそもちょっと、ねじれています。

消音機なんかついてません。昔だから、その存在もなかった。

 

というのも、「娘にピアノ、いいな」と思ったのは父親で、

「下の家に音が響いて申し訳ない」と思ってたのが母親で、

そこのねじれが、私にかかってきたんですよ。

「そっと弾け」「長時間弾くな」とちょいちょい圧力をかけてきました。

こっそりと。

 

そっと弾くなんて、無理だけど、

そっと弾いてましたね。

お友達が私のピアノを弾くと「そっとしてない」ので、

母からクレームが。

あの子のピアノは乱暴だ、と。

そうじゃないんだけどな。

 

ピアノをシャララ~ンと披露するには、毎日毎日、

何時間も練習は必要ですよね。

「先生に習ってれば誰でも出来るだろ」と思ってる昭和父と、

近所迷惑が耐えられない母。

 

結果的に、まったく練習しないで教室に通い、

小学生が、かかなくていい冷や汗をたくさんかき、

先生にも冷たい対応をされましたとも。

全然上達しないから、楽しくない。

それでも、やめるって言わない私。

 

ずっと楽しくないわけじゃなかったんですね。

音楽そのものは、好きでした。

中学のころの先生のことは好きで、

そのころは少しは練習してたので、楽しかったですね。

 

高校に入るころ、一軒家を建てて団地から脱出することになりました。

お金が大変だから教室はやめるように、と

決定として聞かされました。

そのかわり、新しいピアノを買ってやる。

古いボロボロのピアノを新しい家のリビングに置くのは、嫌だ、と。

 

古いピアノは、「これでもいい」というおうちに

引き取られていきました。

私はなんだか申し訳ない気持ちでしたよ。粗大ごみを押し付けたような・・・。

 

 

もう習わないなら、買わなくてもよかったかもしれないのにね。

新築してお金がないから、レッスン代も、新しいピアノももう無理だって

そう言われたら、私は承諾したと思います。

(買ってくれるというものを、断ったりはしませんでしたが)

親にお金がないことなんかは、わかっていました。

(そういうとこ長女)

 

ピアノ習いたいって、結局一回も、私、言ってないんだな。

そして「辞めたい」とも。

 

結婚後、夫が自宅を建てて、実家からピアノが運ばれてきました。

自分の家(一軒家)にピアノがあって、

小学生のころの私からすれば、夢のよう。でも。

ピアノ弾いていると、お姑さんが必ずやってきて、

主に褒めてはくれるんだけど、あれこれ、コメントするのが嫌で、

結局、あんまり弾いてない。

弾いてないのが癖になって、今もあんまり弾いてない。

 

今の調律は、「会員」ということになっているので、

2か月に一回引き落としで会費をお支払いして、

年1回の調律に来てくれることになっている。

お金のお支払いが先なので、絶対に連絡をくださいます。

そうやって20年が経ちました。

 

 

最初は結構ボロボロだったけど、今はとてもいい状態。

調律師さんも「いいピアノですよ」と言ってくれます。

 

あのころのヤマハのアップライトピアノは、黒くてでかくて、

ビーンと透明感のある強い音が特徴でした。

団地暮らしの私と母が選んだのは、茶色で少し背が低い。

クリーベルというメーカーの、柔らかな音が特徴のピアノでした。

 

吹奏楽やってたのも、楽譜が読めたからだと思う。

あと、喘息と中耳炎で、スポーツが全部苦手だったせいもあるけど。

そう思うと、やらせてくれてありがとう、とも思う。

 

でも、自分にきっかけがないことで頑張るのは、キチイな、と思う。

自分でやりたい!って思わないで始めたことって、

何が何でも感がないというか。一段冷めてるというか。

 

小さいころにピアノを習いたかったな、と思う人は結構います。

 

たしかに、「ヤマハオルガン教室」には母と一緒に参加していて、

母はその後もバイエルくらいの腕前から上達しませんでしたが、

いくらサボっていても、私はソナチネまで行けたんで、

やっぱり頭が柔らかかかったからか。

 

ピアノ習って楽譜読めたらいいな、と思う人も。思った以上にいます。

でもね。

私の父親のように「習ったらすぐできるだろ」と思ってる人が

多いような気がしますよ。

だって押したら音が出るだろ?って思うみたい。

 

前提として、家でずっと練習してるんですよね。

基礎練は完全に筋トレ。10本の指が自由に動くようになるための。

黙々とやってても、基本的にうるさいですよ。すぐ曲なんか、弾けないですよ。

 

調律していると、やっぱりピアノの音はいいな、と思います。

今なら習ってもいいんだよな。とか思います。

15歳から、ずっと好きなようにしか弾いてないんだけど、

ちゃんとやるなら習った方が楽しいよね。とは思っています。

 

まあ、そのうち、また。

ピアノには、調律してもらいながら、待っていていただくこととしましょう。