欲しいものを手に取って、値札を見て、棚に戻す。
戻すときに考えているのは、欲しいじゃなくて
「お金がなくなる」みたいなことじゃない?
レジの列に並ぶ前から、
終わりの計算が始まってる。
使ったら減る。減ったら足りない。
足りなくなったら、どうしよう。
その計算が、欲しいものより先に、手を戻してる。
使うと減る。
減ると、無くなる。
無くなると、終わり。
その線で、手が止まってる人、いるよね。
違和感は、そこなんだよ。
財布の中が減ることと、
お金が消えて無くなることは、
別なのに、同じものとして握ってる。
お金は、使っても無くならないよ。
世の中にどれだけあるか、知らないの?
お金をなくせる人がいるのなら、
私は会ってみたい。
手紙を出した感じ。
手元からは、確かに無くなる。
届いた先には、ある。
消えて穴に落ちたわけじゃない。
財布から出たお金も、同じだよ。
自分の手元から動いただけ。
誰かのところへ行って、そこでまた動く。
世界から消滅したわけじゃない。
無くなった気がするのは、
自分の財布を見てるから。
財布の中は減る。それは本当。
減ることと、無くなることを、
同じにすると、使うこと全部が、
終わりの予告になって、
欲しいものも、やりたい方向も、
全部棚に戻る。
行きたい方向は、見えてる。
なのに先に来るのが、無くなる、の方。
手が止まるのは、足りないから、だけじゃない。
消える、と思ってるから。
怖いのは、わかるよ。
減ったあとの数字を、
終わりだと思ってるんだから。
でもね、
終わりだと思うと、
今日の一歩が、出せなくなる。
正しい使い方かどうかは、
握ってるあいだにはわからない。
後から見えてくるものだから。
握ったままなら、見え方も動かない。
出したお金は、無くなったんじゃない。
場所が変わっただけ。
場所が変わったお金は、
誰かのところで仕事をしてる。
自分の財布から消えたように見えて、
世の中のどこかでは動いてる。
なくせる人がいるなら、会ってみたい。
会ったことがないのは、
そんな人はいないからなんだよ。
お金は、使っても無くならない。
無くなった気がして棚に戻すのは、
財布の話を、世界の話にしてるだけ。
手元から出しても、世の中には残ってる。
その見方の方が、欲しいものの方へ手が伸びる。