月に1度楽しみにしているオンラインセミナーくすり×リテラシー2023年2月18日3月19日4月22日)、昨日は曝露要因の交互作用(interaction)がテーマでした。これまでいま一つよく分かっていなかったので大変有用でした。

 

よく分かっていなかった理由の一つは、interactionを「相互作用」と訳している場合と「交互作用」と訳している場合があり、同じなのか違うのか混乱していたからです。interactionの訳なのでどちらも意味は同じ、疫学の専門家は相互作用と訳すことが多く、統計学の専門家は交互作用と訳すことが多いという説明でした。相互作用という語は疫学以外でも使われる(たとえば薬の相互作用)ので、2つの曝露要因間のinteractionという意味では交互作用のほうが使いやすいかもしれません。そのため以後は交互作用という語に統一します。

 

交互作用とは「2つの曝露要因が重なった場合に、それぞれが単独で存在する場合に比べて、曝露要因と健康アウトカムの関連性が大きく(または小さく)なる現象」を指します。交互作用(相互作用)には「相乗的モデル」と「相加的モデル」の2つがありまる。

 

たとえば曝露要因Aがあるとアウトカムが3倍、曝露要因Bがあるとアウトカムが5倍になる場合、相乗的モデルでは、AとBの両方がある場合にアウトカムが15倍(3×5)を超えるようなら「交互作用がある」(AとBが単独で存在する場合に比べてアウトカムのリスクが超過する)と考えます。一方、相加的モデルでは、Aの3倍を「1倍+2倍」、Bの5倍を「1倍+4倍」と考え、AとBの両方がある場合にアウトカムが7倍(1倍+2倍+4倍)を超えるようなら「交互作用がある」と考えます。

 

交互作用の影響を検討する場合、疫学者は相加的モデル、統計学者は相乗的モデルで考えることが多いそうです。というのも相加的モデルは、相対リスクだけでなく絶対リスクでも使えるのでより適切といえるからだそうです。相加的モデルは相乗的モデルに比べて「交互作用がある」と言いやすい(交互作用があると言える閾値?が低い)とも言えます。

 

交互作用についてここまでクリアな説明を聞いたことがなかったので、すっきりしました。例として挙げられていたのは、遺伝要因とピロリ菌感染の交互作用を検討した日本発の論文(NEJM2023; 388:1181-90. 理化学研究所2023年3月30日)でした。