NEJMの論文を読むオンラインセミナーで「死亡率(mortality)」が指す中身について解説があり、よい復習になりました。

 

1番目はいちばん本来的な意味で「死亡という健康アウトカムの発生率」。分母は集団の観察人時(通常は人年person-years)、分子は集団から発生した死亡の数(人)です。なので単位は「年当たり」となり、死亡する速さが分かります。

 

2番目は死亡率と言いながら実際には「累積死亡率(cumulative mortality)」の意味で使われることがあり、この場合、分母は観察開始時の(患者と非患者をあわせた)集団の人数、分子は集団のうち一定期間に発生する死亡の数です。分母と分子の単位が同じ(人)なので、単位は割合(%)です。日本語だと「率」なのに意味するところは「割合」です。

 

mortalityという語で実際にはcumulative mortalityを指すことがある点は、incidenceという語で実際にはcumulative incidenceを指すことがあるのと同じです。

 

そして3番目は、死亡率と言いながら実際には「致死率(case fatality)」の意味で使われることがあり、この場合、分母は観察開始時の患者の人数、分子は患者のうち一定期間に発生する死亡の数です。分母と分子の単位は同じ(人)なので、単位はやはり割合(%)です。致死率(=死亡割合)の意味で使われている場合、100%から致死率を引いた残りは、患者のうち一定期間に死ななかった(生存した)人の割合(生存割合)になりますが、日本語ではこれを生存率と言ったりするのでややこしいです。

 

今日の大腸がん検診の論文(NEJM.2022;387:1547-56)および論文への批判に対する著者の回答(NEJM.2023;388:376-379)は、坪野先生が「エレガント」と仰るのも納得の明解さでとても勉強になりました。来月も参加しようと思います。