9月1日に米国で緊急時使用許可(EUA)が認められた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)2価ワクチン(くすり×リテラシー2022年9月1日)について、The Conversationに詳しい解説記事が載っていました(The Conversation2022年9月1日)。筆者は南カロライナ大学の微生物学者です。

 

元の株とオミクロンBA.4/BA.5に対応した2価ワクチン(米国でEUAを得たもの)は、その有効性が臨床試験で確認されていません(前臨床段階、くすり×リテラシー2022年8月24日)。しかし、元の株とオミクロンBA.1に対応した2価ワクチン(英国で承認(くすり×リテラシー2022年8月16日)され、日本でもPfizer、Moderna両社が申請中(くすり×リテラシー2022年9月2日)のもの)は、臨床試験で元の株およびBA.1に対する免疫を誘導し、BA.4/BA.5に対しても(BA.1よりは低いけれども)抗体反応がありました(企業側の発表、Science2022年8月30日)。

 

この結果からFDAは、BA.1対応の2価ワクチンは、現状の流行(BA.4/BA.5)に対して十分な反応がないかもしれないという理由で、BA.1との2価ワクチンを拒絶し、BA.4/BA.5を含むよう両社に求めました(FDA2022年6月30日)。その代わりに、時間のかかる臨床試験をせず前臨床(だけ)でEUAを認めたわけです。この点は米国内でも議論になっているようです。一方で、インフルエンザワクチンは次シーズンに流行しそうな株を選ぶだけで臨床試験せずにそのまま接種されていますので、臨床試験をやり直さなければならないわけでもないのかもしれません。

 

日本で現在申請中の2価ワクチンは、米国では拒絶された流行遅れのものということになります。両社はBA.5に対応した2価ワクチンについても申請する方針です(読売2022年9月5日共同2022年9月5日)。