子宮頸がんワクチン問題:社会・法・科学』(みすず書房、2021)を読みながら(本書については別の機会に改めて)、ワクチンについてネットサーフィンしていたら、以前の記事(くすり×リテラシー2020年8月2日)で紹介したLSHTMのハイジ・ラーソン教授らのグループが、ワクチン(全般)に対する信頼度について調査した結果を昨年9月に発表していた(Lancet. 2020; 396(10255): 898-908.、日経Gooday2020年10月22日)のを見つけました。

 

この研究では、2015年9月から2019年12月に世界149カ国で18歳以上の人々を対象に行われた290件の調査(対象は計28万4831人)を、“ベイズ多項式ロジットガウシアンプロセスモデル(Bayesian multinomial logit Gaussian process model)”という(難しそう!)モデルを用いて分析しました。「ワクチンは安全だと思う」「子どもがワクチンを受けるのは重要だと思う」「ワクチンは有効だと思う」という3つの質問に対する回答に基づいて、2015年と2018年の2つの時期で、ワクチンの信頼度を計算しました。

 

その結果、2015年時点で、「ワクチンは安全だと思う」という質問に「強く同意」の割合が高かったのは、アルゼンチン(89.4%)、リベリア(86.1%)、バングラデシュ(86.1%)で、低かったのは日本(8.9%)、フランス(8.9%)、モンゴル(8.1%)でした。これほどの認識の差があるとは驚きです。

 

日本は3つの質問すべてで「強く同意」する割合が目立って低く、ワクチンに対する信頼度が最低レベルでした。これについて著者らは、「2013年に始まったHPVワクチンの安全性に対する恐怖と、それに続く厚労省の積極的勧奨を中断するという決定に関係しているかもしれない(this might be linked to the human papillomavirus (HPV) vaccine safety scares that started in 2013, and following the decision by the Japanese Ministry of Health, Labour and Welfare in June, 2013, to suspend proactive recommendation of the HPV vaccine)」と述べていました。

 

確かに当時はそうだったかもしれませんが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種が国を挙げて大規模かつ急ピッチで行われていることを考えると、ワクチンに対する日本人の認識も変わっているかもしれません。筑波大の原田教授が9月に実施した調査によれば、COVID-19ワクチンを「2回接種済」「1回接種済」「予約済(まだ接種できていない)」「多分接種する」「絶対に接種する」を合わせた「接種した/したい」人は全体の85.5%に上り、逆に「多分接種しない」「絶対に接種しない」は計8.9%にとどまっていました(Yanoo!ニュース個人2021年9月9日)、Yahoo!ニュース個人2021年9月13日)。原田先生はこの結果から「心配された「ワクチンデマ」などのネガティブな影響は限定的であった」と分析しています。