FDAの諮問委員会(くすり×リテラシー2020年12月9日)が開催された(12月10日)まさに当日に、Pfizer/BioNTechの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(BNT162b2、くすり×リテラシー2020年11月10日11月15日11月19日11月21日)のフェーズⅡ/Ⅲ試験(NCT04368728)の結果がNEJMに発表されました(NEJM published Dec 10, 2020. DOI: 10.1056/NEJMoa2034577)。PICOは以下です。

 

P:16歳以上の人(計4万3448人)に対して

I:BNT162b2を接種すると(ワクチン群:2万1720人割付)

C:プラセボを接種するのに比べて(プラセボ群:2万1728人割付)

O:2回目接種7日後のCOVID-19発症はどうか?

D:プラセボ対照三重(Participant, Care Provider, Investigator)盲検RCT

F:Pfizer、BioNTech

 

 割り付けられた人のうち、初回接種を受けたのはワクチン群1万8860人、プラセボ群1万8846人、2回目接種を受けたのはワクチン群1万8556人、プラセボ群1万8530人でした。うち、過去の感染歴がないことが明確な3万6523人(ワクチン群1万8198人、プラセボ群1万8325人)が有効性の解析対象となり、COVID-19発症はワクチン群8人、プラセボ群162人、有効率は95.0%(95%CI 90.3–97.6)でした(Table2)。単純計算した発症割合は、ワクチン群8/18198=0.044%(=発症しなかった割合99.956%)、プラセボ群162/18325=0.884%(=発症しなかった割合99.166%)になります。

 

 以前にやった計算(くすり×リテラシー2020年12月5日)を再度やってみると、相対リスク減少は(1-0.044/0.884)×100=95%ですが、絶対リスク減少は0.884-0.044=0.84%分だけでした。試験が実施されたのは米国、トルコ、ドイツ、南アフリカ、ブラジル、アルゼンチンの6カ国で、いずれも人口100万人当たり症例数は日本の10倍以上です(worldometerによる)。そんな国々でもプラセボ群の99%以上がCOVID-19にかからなかったということも押さえておくべきと思います。予防効果はそれくらい微妙で、そうであっても国は健康な住民にワクチンを接種するという判断をするわけです。だからこそ安全であることが重要になります。

 

 補足資料に載っていた有害事象の表(TableS3)は、割り付けられた人のほとんど(ワクチン群2万1720のうち2万1621人、プラセボ群2万1728人のうち2万1631人)が対象でした。全有害事象はワクチン群26.7%、プラセボ群12.2%、重篤(serious)な有害事象はワクチン群0.6%、プラセボ群0.5%に起こりました。ワクチンに関連する重篤な有害事象は4人(ワクチン接種に関連する肩の損傷(shoulder injury related to vaccine administration)、右腋窩リンパ節腫脹(right axillary lymphadenopathy)、発作性心室性不整脈(paroxysmal ventricular arrhythmia)、右足の知覚異常(right leg paresthesia))でした。また、ワクチン群2人、プラセボ群4人が死亡しました。

 

 研究概要は便利で頼りたくなりますが、論文の批判的吟味には不向きです。