新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンは、既にPfizer(くすり×リテラシー2020年11月19日)とModerna(くすり×リテラシー2020年11月17日)がFDAに緊急時使用許可(EUA)を申請し(くすり×リテラシー2020年11月21日)、来週にもゴーサインが出そうな状況です。

 

 一方で、分かっている情報はプレスリリースによるものだけ。プレスリリース(やそれに基づく報道)だけで事実として確定されてしまうことの問題点(くすり×リテラシー2020年11月15日11月25日)について、BMJの副編集長(associate editor)であるピーター・ドシが11月26日に「“95%有効”なワクチン-注意しよう、そして、まずフルデータを見よう」と題するオピニオンを発表していました(BMJ Opinion2020年11月26日)。

 

 プレスリリースでは分からなかったこととして、ドシは以下の3点を挙げています。いずれももっともな指摘です。

1)有効性は相対リスク減少(RRR)として述べられており、絶対リスク減少(ARR)が述べられておらず、1%未満と思われる。

(補足)Pfizerの11月18日付のリリースでは、2回接種した被験者が4万1135人いて、170例のCOVID-19発症者のうち8例がワクチン群、162例がプラセボ群でした。仮にワクチン群、プラセボ群が同人数(2万568人)だったとして、発症割合は、ワクチン群:8/20568=0.035%、プラセボ群:162/20568=0.788%となり、ARRは0.788%-0.035%=0.753%で、1%未満です。

2)アウトカムとして重要な救命効果(特に高齢者や虚弱者の)や予防効果が不明

(補足)予防効果の証明にはヒトチャレンジ試験(くすり×リテラシー2020年6月9日10月21日)が厳密とされています(予防衛生協会2020年9月28日の解説が詳しいです)。

3)ワクチン接種後の長期(3カ月、6カ月、12カ月)の影響については何も分からない

 

 他にもいろいろ問題点を指摘した上で、「データをすべて明らかにし、厳格に精査しなければ、情報を得た上での意思決定にならない。データは公開されなければならない(Only full transparency and rigorous scrutiny of the data will allow for informed decision making. The data must be made public.)」と強く主張していました。抗インフルエンザ薬のオセルタミビル(タミフル)で臨床試験のデータ公開に拘った(タミフルキャンペーン)BMJらしいです。