☆後編

 

 

 

 

 

 

 

 

キラキラの遊園地。
楽しそうな音。
光るアトラクション。
こんなの――

 

気にならないわけない!!


門をくぐった瞬間――
 

「うわあああっ!!!」
 

みーしが叫んだ。

いや、私も叫びそう。
 

だってさ!!
目の前に広がってるの、完全に遊園地なんだけど!
観覧車は昨日見たやつよりもっとキラキラしてるし、
ジェットコースターは空の上までぐるんって上がってるし、
メリーゴーランドは星みたいに光ってる!
 

しかも――
全部、なんかちょっと変!!
 

「ねえゆいし!!見て!!」
 

みーしが指さした。
ジェットコースターのレール。
 

……空に浮いてる。
 

「いやいやいやいや!!」
 

「落ちるでしょあれ!!」
 

でもコースターは普通に走ってる。
しかも乗ってるの、人じゃない。
 

「……ぬいぐるみ?」
 

クマとかウサギとかのぬいぐるみが、
「きゃーーー!」って言いながら乗ってる!!
 

「なにここ!!」
 

みーしと私で大爆笑。
そのとき。
 

「いらっしゃいませ!」
 

声がした。
振り向くと――
 

白いクマのぬいぐるみが立ってた。
しかも帽子かぶってる。
遊園地のスタッフみたいなやつ。
 

「ようこそ、夜のゆめ遊園地へ!」
 

……しゃべった。
みゆと私は顔を見合わせる。
 

「しゃべったよね?」
 

「うん、しゃべった」
 

クマはぺこっとおじぎした。
 

「アトラクションはご自由にどうぞ!」
 

みーしの目がキラッて光る。
 

「ゆいし!!」
 

「うん」
 

「全部乗ろう!!!」
 

「全部!?」
 

でも正直。
私もそう思ってた。
だって、こんな遊園地――
 

 

絶対楽しいに決まってる!!!
 

まず最初に乗ったのは、メリーゴーランド。
でも普通のじゃない。
動物が全部、お菓子でできてる!
 

チョコの馬。クッキーのウサギ。キャンディのユニコーン!!
 

「うわー!!どれ乗る!?」
 

「これ!!」
 

みゆがキャンディユニコーンに飛び乗る。
私はチョコの馬。
 

音楽が鳴り始める。
キラキラキラ……
メリーゴーランドが回り出す。
 

その瞬間。
 

「え!?」
 

馬が浮いた。
 

「「えええええ!?」」
 

地面からふわっと離れて――
空に上がってく!!
 

「ちょっと待って!!」
 

「空飛んでる!!」
 

メリーゴーランドごと、空をぐるっと一周!
下を見ると、遊園地のライトがキラキラしてる。
 

「すごーーーーい!!」
 

みーしがめっちゃ笑ってる。
降りたあとも、まだテンション上がりっぱなし。
 

「次あれ!!」
 

指さしたのは――
星ジェットコースター。
レールが夜空に続いてる。
 

「いや高くない!?」
 

「ご自由にどうぞって言われたじゃんっ!」
 

みーし、待ってーーー!!
 

コースターは星の形。
スタッフのクマが言う。
 

「それでは、しゅっぱーつ!」
 

ガタン。
次の瞬間。
 

「うわあああああ!!」
 

 

一気に空へ!!
 

風がびゅんびゅん当たる!
下には遊園地の光。
上には星。
コースターはぐるぐる回る!!
 

「速いいいい!!」
 

「たのしいいい!!」

そして最後にくるっと一回転して、着地!
 

「はぁ……!」
 

降りたあと、みーしが言った。
 

「ここさ」
 

「うん」
 

「最高じゃない?」
 

……ほんと、それ!
 

でもそのとき。
私はちょっとだけ気づいた。
遊園地の奥のほう。
 

ライトが――
少し暗い。
壊れた乗り物も見える。
 

なんだろう。
 

この遊園地。
めちゃくちゃ楽しいけど……
 

 

なんか、元気がない気がする。

 


「次なに乗る!?」
 

みーし、まだまだ元気。さっきジェットコースター乗ったばっかりなのに!
 

「ちょっと待って、休憩!」
 

私はベンチにどさっと座った。
周りを見ると、遊園地はまだキラキラしてる。
観覧車も回ってるし、
メリーゴーランドも音楽が鳴ってる。
 

でも――
さっき見えた、奥のほう。
やっぱりちょっと暗い。
 

「あれ?」
 

私は立ち上がる。
 

「みーし、ちょっとあっち行ってみない?」
 

指さしたのは、遊園地の奥。
みーしも見る。
 

「ほんとだ」
 

「なんか暗いね」
 

私たちはそっちへ歩いていった。
さっきまでの場所は、めっちゃ明るかったのに。
奥に行くほど、ライトが少ない。
 

 

そして。
 

「うわ」
 

壊れた乗り物。
メリーゴーランドの馬が、動いてない。
観覧車のゴンドラが止まってる。
 

「え、なんで?」
 

そのとき。
後ろから声がした。
 

「……気づいてしまいましたか」
 

振り向く。
さっきのクマのスタッフ。
帽子かぶった白いクマ。
でもさっきより、なんか元気ない。
 

みーしが聞く。
 

「ここ、壊れてるんですか?」
 

クマは小さくうなずいた。
 

「この遊園地は、みんなの夢や、楽しい気持ちでできています」
 

「夢……?」
 

私は聞き返す。
クマは続けた。
 

「でも最近、遊びに来る人が減ってしまって」
「夢の力が弱くなっているのです」
 

私は周りを見る。
暗いライト。
止まった乗り物。
 

「それで……」
 

「遊園地が消えかけているんです」
 

みーしと私は同時に言った。
 

「ええええ!?」
 

「消えるの!?」
 

クマはうなずく。
 

「このままだと、全部消えてしまいます」
 

みーしがすぐ言った。
 

「それダメじゃん!!」
 

ほんとそれ!!
だってさ!
こんな楽しい遊園地なくなったら、めちゃくちゃもったいないじゃん!!
 

私は観覧車を見る。
キラキラしてるけど……
 

さっきより、ちょっとだけ光が弱い気がする。
 

「どうしたらいいの?」
 

私が聞くと、クマは言った。
 

「遊園地の真ん中に」
「夢の観覧車があります」
「そこに乗って願いを言うと、遊園地に力が戻るかもしれません」
 

みーしがすぐ私を見る。
目がキラキラしてる。
 

「ゆいし」
 

「うん」
 

「乗るしかなくない?」
 

……たしかに。


私は観覧車を見上げた。

大きくて。
キラキラしてて。
でも、どこかさみしそう。
 

「……よし」
 

私は言った。
 

「乗ろう」

「遊園地、助けるぞーー!!」

そのとき、観覧車がゆっくり光った。
まるで――
 

 

待ってたみたいに。

 


 

私たちは遊園地の真ん中まで走った。
そこにあったのは、めちゃくちゃ大きい観覧車。
 

「でっか!!」
 

みーしが見上げる。
ほんとに大きい。
さっき乗ったアトラクション全部より大きい気がする。
 

でも、ライトはキラキラしてるのに、
どこか元気がない。
 

すると、クマのスタッフが言った。
 

「この観覧車の頂上に来たとき。願いを言ってください」
「夢の力が戻るかもしれません」

みーしがすぐ言う。
 

「じゃあ乗ろ!!」
 

私たちはゴンドラに乗り込んだ。
ドアが閉まる。ガタン。
 

観覧車がゆっくり動き出した。
 

「おおー……」
 

遊園地がどんどん小さくなる。
ジェットコースターも見える。
メリーゴーランドもキラキラしてる。
でも――
 

 

やっぱり奥のほうは暗い。
 

「ほんとに消えちゃうのかな……」
 

みーしがつぶやく。消えないでほしいな……。
そのとき。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガクン!!
 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!?」
 

観覧車が急に揺れた。
もう一回。
 

ガタン!!!!!
 

「ちょっと待って!?」
 

ライトがチカチカする。
そして──止まった。
 

「うそでしょ!?」
 

観覧車は、途中で止まってしまった。
上を見る。
頂上はまだ遠い。
 

「これ……」
 

「頂上まで行けないんじゃない!?」
 

みーしが窓に顔をくっつける。
そのとき。
 

ギィ……
 

変な音がした。
 

「……なに?」
 

見ると――
ゴンドラのドアが、少し開いてる。
 

「え!!」
 

風がびゅうって入ってくる?!
 

「ドア開いてる!!」
 

「ちょっと待ってこれヤバくない!?」
 

観覧車はギシギシ揺れてる。
もしここから落ちたら――
いやいやいやいや!!
 

 

あれ?

 

私は外を見て、気づいた。
観覧車の柱のところ。
小さい鐘みたいなものがついてる。
キラッて光ってる。
 

「あれ……?」
 

「みーし!!」
 

「なに!?」
 

「ベル!!」
 

「え!?」
 

「あのベル鳴らしたら、動くかも!!」
 

「届かないよ!!」
 

たしかに遠い。
でも――
私は窓を開けた。
 

「ゆいし!?なにしてるの!?」
 

「ちょっとだけ外出る!!」
 

「危ないよ!!」
 

風がびゅうびゅう当たる。
私は柱につかまりながら身を乗り出した。
 

 

 

届かない!
 

 

 

「みーし!!」
 

「なに!?」
 

「手つかんで!!」
 

みーしが私の腕をガシッとつかむ。
 

「落ちないでよ!?」
 

「落ちないって!!」
 

私はもう一回手を伸ばす。
あとちょっと。
 

あとちょっと!!
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「届いてええええ!!」
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラン!!
ベルが鳴った。
 

その瞬間、遊園地のライトが一斉に光る。
 

キラキラキラキラ!!
観覧車がゴゴゴッって動き出した。
 

「動いた!!」
 

「やった!!」
 

私は急いでゴンドラの中に戻る。
ドアもパタンと閉まった。
観覧車はまた回り始める。
 

そして。
どんどん上へ。
頂上まで、あと少し。
遊園地が全部見える高さ。
 

ゴンドラが一番上に来た瞬間。
ふたりで叫んだ。
 

「「お願い!!」」

「「この遊園地、消えないで!!」」
 

次の瞬間──


観覧車が
まぶしく光った。

 


「うわっ!!」
 

思わず目を閉じる。
次の瞬間、遊園地中から光があふれた。
 

キラキラキラキラ……!!
 

下を見ると、さっき暗くなってた場所が、全部光ってる!
止まってたメリーゴーランドが動き出す。
壊れてた乗り物も、キラッて光って元通り!
ジェットコースターもまた走り出した。
 

「やったーーー!!!」
 

みーしが叫ぶ。
観覧車はゆっくり回りながら、下に降りていく。
遊園地はさっきよりずっと明るい。
ライトもきれいだし、音楽も元気。
 

まるで、遊園地が生き返ったみたい!!!
 

そして観覧車が地面についた。
ドアが開く。
私たちは外に出た。
すると、あのクマのスタッフが走ってくる。
 

「ありがとうございます!!」
 

ぺこっとおじぎをする。
 

「あなたたちのおかげで、遊園地に夢の力が戻りました!」
 

ふたりで喜ぶ!


……と思ったら。
いきなり、みーしが私のほうを向いた。
 

そして。
 

「ゆいし!!」
 

「え?」
 

「さっきめっちゃ危なかったじゃん!!」
 

 

え。
 

「窓から出るとかさ!!」
「落ちたらどうすんの!?」
 

みーし、めっちゃ怒ってる。
 

「いやでもベル鳴らさないと――」
 

「でも危ないでしょ!!」
 

うっ。
ちょっと怒られるかも、とは思ってたけど、、、
私はちょっと肩をすくめる。
 

「……ごめん」
 

すると。
みーしは少し黙って。
それから、ぽそっと言った。
 

「……でもさ」
 

「え?」
 

みーしがちょっと笑う。
 

「よくやったじゃん」
 

私はびっくりしてみーしを見る。
 

「ゆいしがベル鳴らしたから、観覧車動いたんでしょ?」
 

「……まあ、たぶん」
 

みーしがにっと笑う。
 

「さすが私のお姉ちゃん!」
 

なんかちょっと照れる。
 

「双子だけどね」
 

「細かいことはいいの!」
 

そのとき。
遠くの空が、少し明るくなっているのに気づいた。
 

「あれ……?」
 

クマが言った。
 

「もうすぐ朝です」
「朝になると、この遊園地は消えてしまいます」
 

「「えーーー!?」」

「もう帰っちゃうの!?」
 

私がきいて、クマはうなずく。
 

「でも」
「また夜9時になれば、門は開きます」
 

みーしがすぐ私を見る。
 

「ゆいし」
 

「うん」
 

「また来ようね」
 

私は遊園地を見回す。
キラキラしてて。
楽しそうで。
なんか、ちょっと特別な場所。
 

私はうなずいた。
 

「うん。また来よう」
 

私たちは門まで歩いた。
振り返ると、観覧車がゆっくり回ってる。
さっきまで乗ってたやつ。
 

まるで、「またね」って言ってるみたい。
門をくぐる。
瞬間、光がふわっと消えた。
気づくと、私たちは空き地に立っていた。
 

朝の空。
静かな風。
 

みーしが言う。
 

「……ほんとにあったんだよね?」
 

私はポケットに手を入れた。
すると。
 

カサッ。
 

なにか入ってる。
それを出してみると
星の形のチケット。
 

裏にはこう書いてあった。
 

〚 また夜9時に。 〛
 

私は森の向こうを見る。
ほんの一瞬だけ。
観覧車がキラッて光った気がした。


「みーし」
 

「なに?」
 

「今日の夜も来るよね?」
 

 

 

───もちろんっっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜だけ開く ひみつの遊園地 ───《完》

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

最後までよんでいただき、ありがとうございました泣くうさぎ

 

 

 

それでは、また会える日まで!!