こんな未来が早くこないかなぁ



「あぁ、これはただのガンだね。おくすり3日分出しときますね おだいじにどうぞ!」




その人は、とてつもなく広い田んぼをもっている。


その人は3代目だ。


大事に大事に育てた稲。


今年の出来栄えはいかがかなと緊張しながら、新米をじっくり味わう。



ある日、その人は胃瘻をつくった。



口から食べる事は命取りになってしまうから。


春は嫌いだ。俺はそのキャンパスに色付けが二度と出来ないから。


夏は嫌いだ。緑の背丈が眩しすぎるから。


秋は嫌いだ。 司令塔にはもうなれないから。


冬は嫌いだ。 その準備にも参加が許されないから。



田んぼを見渡せるその陽当りの良い部屋で



その人は、頭の垂れた黄金色を横目に経管栄養をつなぐ
「うち(病院)じゃぁ往診してないからぁ家で最期を迎えたいんだったらぁ~ 訪問診療やってる所探さないと行けないよねぇ?




私:(で?)





先生:「そう言う事!」




私:(はいッ?
あの……デッ?)





「訪問でしょあなた!
探してよ。紹介状書いとくからぁ。」





えっ?



えぇぇぇ―瀨 あたしなのぉぉぉぉー瀨



まってよ先生 ちょっとまってよ。 それ看護でやんの? あぁ~あ家族わきにいるのにィ。



私:「看護は…診療所探しはしてないんですよ澈 先生に出来ればお願いしたいのですが……」



本人や家族はどうおもってるんだろう



家族:「出来れば…ずっと診ていただいてた先生にお願いしたい気持ちがあるのですが……ムリとなったら家の近所の〇〇クリニックにお願いしたいんですが……」


先生:「あぁ! いいんじゃないですか! 聞いてみたらぁいかがですかぁ?」



(あはは 軽いなぁぁ…)



私:「病状経過の件もありますので 出来れば先生に間に入っていただいて〇〇クリニックに繋いでいただけないでしょうか?」



下手…下手でと…




先生「それはあなたも一緒だよねぇ



(確かにそうなんだけどさぁ、家族目の前にして丸投げ態度はいかがなもんッスカ? 家族は、そして何より本人は、貴方にずっと命預けてきたんだよ。 これから人生の総仕上げをしようとしている人を目の前にして、「俺の役目はここまでぇ~」みたいな…態度取ってんじゃねーよ




なぁぁぁんてヘタレな私はそんな事言える訳もなく……




私:「わかりました。〇〇クリニック行ってきますので、情報提供書いててください…… 後日改めて私、取りに来ます……」




先生:「宜しく~。あそこの先生の姉貴と一緒に仕事した事あるんだわ」





いらねーよ
そんな情報よぉ




知ってんだったら繋げやぁぁぁむかっ



先生:「じゃ、書いておくから! はい次のひとぉ」




悲しかった。
もうちょい寄り添って欲しかったな…… 家族のオドオドしてる顔……不安な顔……ねぇ、先生。看取りの家族介護って、物凄くスタミナが必要で、毎日の変化に家族は一喜一憂して……自分を責める事もある……これから先、眠れない夜を迎える日もある……みんなどんなモチベーションでいなきゃいけないんだろう。



診察室を出ると、家族は私に何度も頭を下げた。

「ごめんなさいね。ごめんなさいね。」



なんで何も悪くないこの人達が謝る事になるのか。


なんで……アタシは舵取りが下手なのか…


なんで先生は………




後日私は近所のクリニックへとむかい、情報提供書をみてもらい、在宅看取りを家族は希望しており、本人もそう強く望んでいる事を話した。



「わかりました。明後日往診に行きます」



ありがとう。先生。




そして、訪問診療が始まり、1ヵ月後、家族に見守られて穏やかな、実に穏やかな顔で天国に旅立った。





いろんな考えがある。


私の話の持って行き方も何かマズかったのかもしれないけど。


最期の時を、バタバタとした進め方はしたくない。在宅は「本人がルール」だから、それを、全力で支えたい。「ムリ」って言いたくはない。



あたしの綺麗事なのかな……