◆集英社文庫
◆1998年11月25日 (文庫版発行)
◇エッセイ
江国さん1964年生まれ。
「ミセス」に3年間連載したエッセイ~30歳記念のエッセイ。
アルフレッド・テニスンの「都の子」という詩から取ったタイトル。
年の近い江国さんだから、所々に私の記憶の断片にも似たような空気感がただよう。
何気ない記憶の断片を愛おしい感情の記憶として一緒に取り出してくれてるようで、
キラキラとしたものが手の中に残ったような気がする。
「放浪の血」
放浪の血は、まっとうな動物なら当然抱え込んでいる、やっかいで幸せな衝動なのである。
*そうそう。。。思考の放浪もやっかいでしあわせだよね。まだまだ、いっぱい放浪したい自分がいる。
「夏の緑」
一体どういう心理なのか自分でもよくわからないのだが、私は夏の緑をみると、「現実をうけいれよう」という気持ちになる。うけいれあぐねるほど複雑な現実があるわけではないのだが、それでもとにかくいろんなことを、怖がらずにみんなうけいれよう、と思うのだ。それはべつに「決意」というような大げさなものではなく、むしろ、「大丈夫大丈夫、外はこんなにきれいなのだから大丈夫」というような、あかるくて楽ちんな気持ちである。
・・・・・・現実に対して目をあけているつもりでも、実はつぶって安心している、などというつまらないことに、ならないようにならないように、・・・・・自分で自分を、しばらないようにしばらないように。すぐにどこにでも、いかれるようにいかれるように。
*緑色は一番好きな色。緑の孤独で温かくて、でも、包み込むような感じが好き。
自分で自分をしばらないように。。。どこにでもいかれるように。。。生きていきたい。
「空から降る音楽」
音楽というものは、どうしてあんなにまっすぐ心に届くのだろう。見えない手で魂をぎゅっとつかまれるみたいな感じ。・・・・・たとえば、真夜中と、お風呂と熱いお茶だけが自分の見方だと思うようなときがある。それ以外のものはすべて神経を逆なでし、人を苛立たせ、かなしませ、そして絶望させる。何をするのも億劫で、気持ちも手足もぐったりしているそういうときに、本を読む気にはなれないが、音楽ならたぶん受けとめられるのだ。
「あらゆるイメージはいったん活字に還元されてこそ、よりゆたかな夢や飛躍に具えることができる」~矢川澄子さんの言葉。
言葉の持つ力〔きわめて個人的なイメージの喚起力、時間にも空間にも支配されないその生命力〕を信じているが、即効性という点で、言葉はやっぱり音楽にかなわない。
☆「小さなオルガンのための貴重な作品集」
☆アルベルト・デ・クレルク演奏。鎮静作用のある音楽。
*「音楽」も「言葉」も心を表現する大切なツール。まっすぐにまっすぐに想いを届けるもの。