おはようございます!
無性に緑茶(ホット)を飲みたくなり、急須で入れてほっこりしている岡田です♪
さて、今回は以前書いた記事「ボディワークってなーに?その1」の続きです。
数年前に比べて、だいぶ一般的に使われるようになった「ボディワーク」ですが、実は根っこは「心理学」です。
あれ?ボディ=体なのに・・・?
心理学(サイコロジー)とは、古代ギリシャ人が人間は身体(ソーマ、ボディ)と魂(サイキ/精神、心)によって成り立っているという考えから、魂(サイキ)を研究することです。
*フロイト(1905)も心理学療法は魂の治療と言っています。
一方、身体(ソーマ)を研究するのが身体学(ソマティクス)です。
*ソマティクス
欧米の学術的な世界で通常用いられている呼称
ただ人間は体と心を別々に捉える二元論では人間を的確に捉えることがむずかしいという理由から、人間には心と体の2つの側面があるという前提のもと、身体・感情・心・精神の観点から臨床的なアプローチをする新しいホリスティックな心理学分野「ソマティック心理学(身体心理学・心理療法)」も確立されています。
東洋の「心身一如」を科学しようということですね。
ソマティック心理学の関連分野と身体・感情心の関係は以下です。
*久保(2011)「図1-1 各アプローチと身体・感情・心の関係図」p.16を岡田が加筆・修正したものです。
【1.ソマティック心理学】
例
各アプローチの総称
アプローチとの関係の強さ
身体=感情=心
アプローチ視点
1・2・3人称のアプローチ
狙い
心身の統合意識、自他との共鳴
【1-1.ソマティクス】
例
ボディワーク、ダンス・ムーブメント手法
アプローチとの関係の強さ
身体>感情
アプローチ視点
1・2人称のボディワーク
狙い
一体感、身体意識、自他への気づき
【1-1-1.フィジカルエクササイズ】
例
マッサージ、エアロビクス、体操、ダンスetc.
アプローチとの関係の強さ
身体
アプローチ視点
3人称のボディワーク
狙い
身体の強化、回復、矯正
【1-2.ツーパーソン心理学】
例
間主観・関係性アプローチ
アプローチとの関係の強さ
心>感情
アプローチ視点
1・2人称の心理療法
狙い
共感意識、自己意識、自他とのつながり
【1-2.ワンパーソン心理学】
例
精神分析学、認知行動療法etc.
アプローチとの関係の強さ
心
アプローチ視点
3人称の心理療法
狙い
自我の確立・回復、認知の修正
上記のアプローチ分類のポイントは、
1.人間の身体・感情・心のどれを「直接的に」アプローチしているか
2.人間を1人称・2人称・3人称どの視点で捉えているか
です。
1.については、ツーパーソン心理学やワンパーソン心理学(狭義のソマティック心理学)は、その名の通り「心理学」ですから、「言葉」を主な手段として用いて、身体をや感情を「心に働きかける」ための窓口として見なしています。
一方、ソマティクスは「身体に働きかける」ことが目的であり、直接的に心に働きかけることに重きを置いていません。
2.については、久保(2011)がまとめています。
【1人称の視点】
・内面的で主観的な「私」からの見方
・内省的・体験的・直感的
・例としてはマインドフルネス瞑想、ソマティクス(ボディワーク)ec.
・学術的方法論は、現象学的、内省的なアプローチ
【2人称の視点】
・内面的で間主観的な「私たち」からの見方
・対話的・合意的・共感的
・例としてはコフートやロジャースなどの間主観・関係性アプローチ
・学術的方法論は、他者との共感や関係性に基づく解釈学、間主観的な心理療法
【3人称の視点】
・外面的で客観的な「それ(それら)」からの見方
・科学的・事実的・論理思考的
・例としてはエアロビクス、精神分析etc.
・学術的方法論は、神経生理学、脳科学、認知科学
これまでのまとめを見る限り、
ボディワークは
1.1人称・2人称のボディワーク(ソマティクス)と3人称のボディワークの2種類が存在する
2.ボディワークとソマティクスが同義の場合もある
3.身体に働きかけるアプローチである
4.間接的に感情に働きかける場合もあれば(1人称・2人称)、働きかけない場合もある(3人称)
ことが分かります。
ただ個人的には、ソマティクスとボディワークという言葉は厳密には分けるべきだと考えています。
なぜなら、あまりにもボディワークの定義が個人によって大きく違うからです。
ある人はボディワークを主観的なものと捉え、ある人は客観的なものとして捉える傾向にあるようです。
久保(2011)は、ソマティクスとボディワークについて次のように述べています。
"ソマティクスとボディワークは、単に呼び方が違うだけで、内容はほぼ一緒と考えることができます。"
そもそもソマティクス(somatics)の「soma」は「身体」という意味であり、どちらかといえば身(主観性)の意味合いが強い言葉です。
自分で気づき、感じる時の「カラダ」は「soma」と言えます。
一方、ボディワーク(bodywork)の「body」は同じ「身体」と訳せますが、どちらかと言えば体(客観性)という意味合いが強い言葉です。
他人から見てもらっている時の「カラダ」は「body」と言えます。
また、提供するアプローチの根源的な目的が「ソマ」なのか、どちらかといえば「ボディ」なのかで、固有名詞のアプローチがどちらに当てはまるのかが見えてくるのではないでしょうか。
加えて、提供する形式でも「ソマ」なのか「ボディ」なのか変わってくるでしょう。
【集団形式】
2人~、能動的な態度が求められる
【個人形式】
1人のみ、提供する内容や時によっては受動的(手技療法)であったり、能動的(セルフエクササイズ)であったりする場合がある
*岡田が作成
もちろん、集団形式アプローチを提供する人間から、「分類上は3人称の視点からアプローチだけど、私は参加者の皆さんには自分で体の良い変化に気づいてもらうようアプローチしている!!」と、言われればそこまでですが。。。
ただそれは、個別に位置づけた目的に過ぎませんから、運動プログラム本来の目的が何なのかに着目し、その目的に沿ってプログラムを進めることが、そのプログラムの存在意義であるともいえます。
次回は、「カラダ」に働きかけるアプローチの分類と個別学派・流派・団体について書いていきたいと思います。
【引用参考文献】
久保隆司(2011)『ソマティック心理学』春秋社
小川隆之・斎藤瑞穂(2009)『これがボディワークだ 進化するロルフィング』日本評論社