脳神経の交叉支配と脳神経の再生について−2

実験的には、脳神経は再生するそうです。しかし、再生を阻害する阻害因子が生体には存在しているので、実際は再生出来ないとのことです。


その阻害因子Nogo(タンパク質)です。


Nogoとは、脊椎動物の中枢神経細胞に対して軸索伸長の阻害効果があり、髄鞘(ミエリン)に含まれる軸索損傷後の再生を阻害する分子で、

脳神経の再生を阻害します。



詳細→中枢神経系の再生を阻む主要因の一つに挙げられるNogo(タンパク質)とその受容体であるNogo受容体-1(=NgR1)との結合が、発生期の神経回路形成に際に、Nogoは、その受容体のNgR1と結合すると神経細胞の軸索伸長を著しく損なわせて、神経再生の阻害します。


参考文献・図→脳科学辞典+大阪大学大学院医学系研究科分子神経科学


脳神経は再生しないと思い込み、寝たきり状態や不活動状態を続けることで、

筋肉が萎縮し衰え

関節が硬くなり

骨が委縮

運動機能が衰えて来ます。

そして、 体のさまざまな器官が機能しにくくなります。

ところが、近年、脳には脳の可塑性があると分かって来ました。


脳の可塑性について調べると、


は経験に応じて構造や働きを変える柔軟性が備わっている。例えば、ケガなどで一部が傷付いても、別の部分が柔軟に“代役”を果たします。この「変化することが出来、その形を保つことができる性質」が脳の可塑性(かそせい)だそうです。



参考図→高知県高知市いずみの病院


ただし、加齢とともに、脳の可塑性は低下して行きます。


には1000億以上の神経細胞があります。脳細胞は一度失われると、2度と再生することはありませんが(阻害因子=Nogo存在)、脳への刺激により、脳細胞の配列が変化し、損傷していない部位が壊死した細胞が担っていた機能を代替し、運動の記憶が戻る、つまり運動機能が回復されて行きます。


の重要な機能は信号伝達と信号処理であり、神経細胞(ニューロン)同士が網目状のネットワークを形成することで機能を果たしています。


つまり、ある神経細胞から別の神経細胞に

いつ、

どのように、

どのような

情報を伝えているかが、脳の機能には重要です。


これに貢献しているのが、シナプスです。

脳細胞と脳細胞が密着し、情報伝達が起こる場は「シナプス」と呼ばれていて、学習や経験で脳細胞のシナプス結合が変化して、運動や行動に変化が現れるようになります。



参考文献・図→群馬上毛新聞


少し詳しく説明すると、

記憶には、


ずっと覚えている記憶

短期で忘れてもいい記憶(忘却)

があります。


シナプスの可塑性は、よく使われる記憶を蓄え使われない記憶を消去して情報を整理して、その人にとって重要な情報とそうでない情報を仕分けしていきます。


シナプスの可塑性が機能しない事は、忘却がうまく機能しないことに繋がり、心身に影響が生じる場合もあるとの事です。


例−ADHD(注意欠陥多動性障害)や自閉症は、一般的に発達障害といわれ、胎児期に神経系回路の発達が正常に働かなかったこと、つまり脳の発達期シナプスの可塑性がうまく働かなかったことが主な原因として考えられています。そのために情報の伝達がうまくいかなくなり、興奮と抑制のアンバランスが起こります。

 

しかし、発達障害の症状の多くは一時期で成長するにつれてそのような症状が改善することはよくあります。


図・忘却のメカニズム


参考文献・図→東洋大学・東洋大学 生命科学部 生命科学科 教授