『宇宙犬マチ』 第3回! | ハッピーなマチ日記+セイ

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元気すぎるヨークシャーテリアの兄弟の日々を綴ったブログでしたが、ハッピーもマチも虹の橋に旅立ちました。そしてセイくんが我が家にやって来ました!

おはようございます!

『宇宙犬マチ』第3回をアップします。

少し長いですが、

お読み頂けると嬉しいです。

ご感想やご意見お待ちしております!

カッピー

 

『宇宙犬マチ』 第3回

Ⅲ 別れ ヒロキ


 いずれにしても、二匹となったワンコ生活は慌ただしいものの、楽しい日々であった。マチが我が家に来て四年後の初冬――。
 数日前に公園ではしゃいでいたハッピーの調子が急におかしくなった。少し咳みたいなものをして、だるそうにしている時がある。マチは何度も体調が崩れたし、出来物ができて、手術をしたりとかを繰り返していて、それを心配そうに見ていたハッピーだったのに、何だかおかしいと思い、すぐに病院に連れて行くと、心臓が肥大していたため、薬を飲むことになった。僕はさほど心配はしていなかった。ハッピーはすぐに翌日には普通に散歩にも行くようになったし、食欲も含め普通に戻っていたからだ。
 しかし仕事上の会食があったため帰りが遅くなった十一月二日。十一時過ぎに自宅に戻ったら、いつものように玄関のところにハッピーが待っていた。しかし呼吸が苦しそうで、ゼイゼイしている。普通ならどんなに遅く帰っても、夜の散歩に行くのが日課だったが、その時ハッピーは行きたくないという意思を示した。マチは散歩にはさほど執着がないので、散歩は行かないことにした。
 その後すぐに彼らに食事を出したのだが、ハッピーはまったく口もつけずに、どんどん呼吸が荒くなり苦しそうな表情になっていく。なんとか病院からもらった薬を飲ませようとしたが、それも拒否された。僕は焦って、すでに夜中となっていたにもかかわらず主治医の先生の携帯に電話を入れた。もう時間を気にする余裕はなかった。十回の呼び出し音がしたところで、切ろうとした時に。先生が出てくれた。ハッピーの症状を早口で伝え、薬も飲んでくれないことを話した。先生はいま遠くにいて、近くの救急病院を紹介してもいいが、自力で歩けるようであれば、明日病院に来てもらった方がいいだろう、とアドバイスをくれた。僕もけっこうお酒を飲んでいたこともあり、車での移動も無理だったので、ハッピーの様子を見ながら、明日早朝に起きて、いつもの動物病院に向かうことに決めた。
 ハッピーは苦しそうであったものの、自力で僕のベッドに這い上がり、僕の目を見てハアハア言っていた。私はそれを見届けると、酒の勢いあり、そのままハッピーとマチにおやすみを告げて、そのまま寝てしまった。
 次の日の早朝、まだ少し酒が残っている感じで五時くらいに目が覚めた。部屋の中はまったくの無音であった。すぐに嫌な予感がして、薄暗い中、ベッドの足元を見るとハッピーが横たわって寝ている。「ハッピー!」と呼んでみたが、まったく反応がない。すぐに飛び起きてハッピーの身体に触れる。冷たく硬くなっていた。柔らかく温かい感覚を予期していたので、僕心も凍りついた。夢であってくれ……とハッピーを抱き上げると冷たく硬く、まったく動かない。「ハッピー逝かないで!」と叫びながら何度もさすってみたが、冷たいまま魂が戻ることはなかった。思わず涙が溢れ出てきて、何がなんだかわからなくなった。少しでも温めてやりたくて、彼を布団に入れて、なでながら添い寝をした。ハッピーは目を開けていて苦しんだ感じはなく、今にも起きて舐めてくれそうだった。僕はずっとずっとなで続け、「ハッピー、ごめん、ごめんよ!」と何度も声をかけた。
 その日は、どうしても外せない取材があったため、仕事に行かなければならなかった。夜勤を終えたリサがすぐに来てくれるとのことであったので、彼女にあとは任せて、マチ一人の散歩を終え、マチと二人で食事をとって自宅を出た。
 通勤電車で座っていても、知らないうちに涙がこぼれ落ちてくる。悲しいという感覚を超えた体験したことのない感情が何度も襲ってきていた。うわの空のまま取材をなんとか終えリサと連絡を取りながら、午後早めに自宅に戻れるようにスケジューリングをした。動物病院にも報告の電話をかけた。先生は一瞬絶句したが、「きっと治療をしても苦しむだけだったと思います。きっと苦労を掛けないようにと思って逝ったのですよ」と言ってくれた。少しだけ心の荷が下りた気がした。また涙が溢れた。そして、動物霊園を紹介してくれたので、それを携帯電話でリサに伝え、連絡を取ってもらった。彼女は気丈にふるまってくれていた。僕は遺影となるハッピーの写真を携帯からプリントして、自宅に戻るとマチが出迎えてくれた。彼は何が起こっているのか理解しているのだろうか?
 リサのおかげで、すでに葬儀の手配も済んでいて、翌日お迎えが来て、ハッピーは火葬されることになった。ちょうどリサも仕事が休みであり、僕も連休を取ることにした。ハッピーは大好きだったマットの上で静かに横たわっていた。マチは、ハッピーの口元と身体をずっと舐め続けていた。「なんで起きないの?」と言っているかのように、喋りかけてもいた。その姿を見ると、さらに悲しみが増大していった。
 マチは夕ご飯の後も、ハッピーをずっと舐め続けた。一瞬も離れることもなく。「マチ、もうハッピーは起きないよ」と言っても……。まるでハッピーの魂を自分の中に取り入れようとしているようであった。その姿を見ると、僕たちはまた悲しい気持となり、涙をこらえきれなかった。

 翌日、車が迎えに来て、ハッピーと僕たちとマチがそろって深大寺の霊園に行き、最後のお別れをした。火葬されるのを待つ時、マチが我が家に来て、ハッピーと初めて車でお出かけしたのがこの深大寺であったことを思い出した。
 あれは晩秋、マチがだいぶ我が家に慣れた時に、二人を連れて、深大寺にお参りに来たのだ。もちろんリサも一緒で。深大寺は犬も連れて入れる厄除けのお寺。みんなの健康と無事を祈るために出かけたのだ。
 お参りを済ませ、犬も一緒に入れる外の席がある蕎麦屋で、お昼を食べてから、その近くの神代植物公園の出入口の方に歩いて行った。そこには落ち葉がいっぱい積もっていた。歩くとカサカサという音が楽しかったのだろう、二人は、はしゃいで走り回ってじゃれ合っていた。その光景が、フラッシュバックのよう目に浮かんできた。その近くにある深大寺動物霊園にて、ハッピーが天に送られることになろうとは……。そんなことをリサと話していたら、また感傷的になってしまった。
 ハッピーは一時間もたたずにお骨になった。霊園の担当者が、それを見てどの部分の骨化を丁寧に説明してくれながら、骨をリサと二人で壺に納めていった。そして小さなキーホルダーになっている金属のカプセルにシッポの骨の一部を納めて、いつも散歩に行くバッグに付けることにした。これで、毎日一緒に散歩ができる。
 マチはその間、僕たちと一緒にいい子で待っていてくれた。すべてが終了すると、再び霊園の人に車で自宅まで送ってもらい、三時間程度でハッピーの見送りは終了した。マチは家に戻ると、何かを探しているように、あちらこちらの匂いを嗅ぎまわりながら、時々止まって悲しそうな表情をしているような気がしてならなかった。それから、マチだけのワンコ生活が始まった。


四 情報 マチ

僕たちはどうして犬に宿ったのだろう?
人間になってしまえば、もっと楽に地球のことがわかったのではないか?
でも犬であれば、人間を客観的に見ることができる。
それに感情に支配もされないし、
短い間にいなくなっても不自然じゃない。
きっと、いなくなったら、おとうさんとおかあさんは悲しんでしまうだろうけど。
ハッピー兄さんの時みたいに……。
それを思うと辛い気持になる。初めての感情だ。

おとうさんは僕を連れて、いろんな所に行ってくれる。
車に乗ったり、自転車のかごに乗ったり、ある時は電車に乗ったり。
公園に行ったり、人がたくさんいる繁華街に行ったり、
犬がいっぱいいる所に行ったり。
今日は人がたくさんいるにぎやかな街に来て、
外に出されたテーブルでランチを一緒に食べた。
公園とは違う匂いがする。
特に食べ物の匂いや香りは複雑なもの…。これらを記憶する。
自然の匂いや香りは何となくわかる。
他の星でも体験したことがあるし、記憶に残っている。
でも人が食べるものの香りは、全くの未体験で、ついつい興味を持ってしまう。
そして、つい食べたくなってしまう。こんなことも初めてだ。
食欲、嗜好、味覚というワードも覚えた。地球に来てからね。
食べる喜びや感動―-そんなものがあるなんて。
でもおとうさんたちが食べるものは、僕たちはあんまり口にできない。
僕たちの身体に悪いんだって……それが残念でならない。
魅惑に負けて、こっそり食べるわけにもいかないしね。
今日も一日が終わって疲れてしまって、ウトウトしてしまう。
おとうさんも疲れたのと、さらにお酒を飲んでいい気分になって、一緒にウトウト状態。
この時が、なんだかたまんなくいいんだなぁ。
しばらくして、おとうさんはが「おやすみ、マチ」と言って、ベッドに向かう。
僕もその寝室にある犬専用のベッドに乗っかって、寝る。
でもね、実は今夜は活動をしなければならない。
お昼に、その分お昼寝をしているから大丈夫。
さっそく、おとうさんがいびきをかきはじめた。
さあ、本来の行動へ!
こっそり寝室からリビングルームへ移動。
パソコンと呼ばれる原始的な端末に、

額の間から伸びる触手を差し込んで、
地球上に流れ出る全ての情報を入手して、学習して記憶する。
防御ソフトなんか瞬時に消して、どんなところにも入り込める。
ここのところ人の命を脅かす新型のウイルスが次々と世界中に広がっていて、
それが原因で、さらにいろんな人種がいがみ合っている。
ついにはある国で侵略戦争も起きてしまった。
かつてない危機的な状況といってもいいかもしれない。
戦争なんかやっている場合じゃないよ!
ネット上には、誹謗中傷のワードがたくさん表れる。
なんでなんだろう? という気がしてしまう。
こんな時は、人間たちが共同してウイルスに立ち向かうべき。
でも、各国のトップは自らの国や個人の利益や利権を優先している。
もちろん対抗する人はいるけど、力で抑え込まれている。
これには呆れるしかない。
でも、ウイルスの感染予防のため、人々の活動が少なくなり、
地球環境にとっては良い状況が生まれている。
ますます人間がいない方が……という情報が集まりつつある。
他の国にいる仲間たちからも続々と情報が集まってくる。
どれもこれも同じようなもの。
この情報をまとめて宇宙司令に送ったら、その結果は間違いなく……アウト!
美しい自然を持つ地球は消え去ることになるだろう。
仲間からのレポートは本当に散々なものばかりなんだ。
しかしその反面、宇宙犬になった世界中の仲間はみな同じことを言ってくる。
飼い主たちは優しく、とてもいい人たちだと。
実際、僕の飼い主のヒロおとうさんとリサおかあさんは、とってもいい人。
もちろん粗相をしたり、いたずらをしてしまうと怒られてしまうけど、すぐに優しい顔に戻って、ナデナデしてくれる。
いろんな所にも連れていってくれるし、
体調が悪いと病院にもすぐに連れて行ってくれる。
そうそうおかあさんが不在で、

おとうさんが海外とか遠くに仕事に出かける時は、
僕が子供の時から通っている病院でお泊りするんだけど、
獣医の先生も看護師さんも、とっても親切。
僕の体調が悪い時なんか、自宅まで連れて行ってくれたり……。
とにかく親切で優しくて、大好きなんだ。
まあ、診察される時は、宇宙犬というのがバレないが冷や冷やものだけどね。
それと注射はちょっと苦手さ。チクッとされるのがなんともね。
あと宇宙犬だから、ちょっとした刺激物に弱いんだ。
皮膚にいろんなものができてしまう。
一度出来物が大きくなって化膿してしまって、

切除することになって、麻酔というものをされたら、精神が離れてしまいそうになったんだ。
おとうさんとおかあさんが、

心配してすぐに来てくれて、大変だったけど、
なんとか保つことができて、そのまま宇宙犬でいられたんだよ。
こんな、優しい人たちに囲まれて、僕は幸せさ。
僕は、他人への<親切>という言葉が好きなんだ。
おとうさん、おかあさん、大好きだよ!
こんな感情があるなんて信じられない。
僕たちの星や種にはない感覚――
これを学べば、大昔に自分たちが失ったものを取り戻せて、
未来はもっと豊かに過ごせるのかもしれない。
過去には、他の宇宙種がそれを獲得しようとして、人を拉致したこともあったらしい。
僕たちは報告を作るだけだから、決して人を傷つけないけどね。

この地球と人間たちが宇宙の脅威になるのか?
僕にとって大切な人、そう家族ができてしまった。
正直、僕は最近悩んでいる。“地球を救いたい”という気持ち……
もちろん宇宙全体の無事が最優先なんだ。
冷静になれない日々が続く中、情報を集め、分析を続けている。

(以降、19日掲載予定の第4回に続く)