今日から
『宇宙犬マチ』の連載を開始します!
毎日更新ではありませんが、
1週間に2~3回分を掲載予定です。
よろしくお願いします!
カッピー
『宇宙犬マチ』 第1回
一 交信 マチ
僕は、宇宙犬マチ。
遠い星から、青い地球にやってきた。
ちょうどその時生まれそうになっている犬がいた。
だから、そこに入り込んだ。
そして生まれて、マチという名前がつけられた。
由来はよくわからない。でも気に入っている。
そして、いまは毎日何かを書いているおとうさんと過ごしている。
毎日、朝と晩の散歩。それとおいしいごはんとおやつ。
いつも優しくなでてくれる。でも、なぜか時々怒られる。
カーペットにオシッコをしただけなのに……。
このあたりの自然は美しい。
春になると緑がまぶしい新しい葉っぱ。
秋には、茶色や赤い鮮やかな葉っぱ。
何色あるかわからないさまざまな形の花は、四季ごとに違う。
空を見ると青い。その先には僕の故郷がある。
夜には、僕の星を照らす太陽も輝いて見える。
お月さまは、形が変化しておもしろい。
こんな星は見たこともない。
いまでも知らないことばかりだ。
そんな生活をしていると、使命を忘れてしまいそうになるけど、
実は夜おとうさんが寝ている間に、
こっそり宇宙司令と交信しているんだ。
交信のやりとりで、いまの宇宙の状況変化を知って、
この地球をどうしたらいいのか?
そんなことを一緒に来た仲間と話し合っている。
時々、おとうさんは目を覚まして、
僕のことを気にしている。
「マチ、どうした? 大丈夫?」って、心配してくれる。
その時、僕は幸せな気分になる。
使命なんかどうでもいい! ってさえね。
どうもおとうさんは、交信を寝言だと思っているみたい。
それで、いいんだ。それで……
Ⅰ 現在 ヒロキ
僕は、ヒロキという。ヤマオカ ヒロキ。
マチという犬ともう十五年も一緒に暮らしている。マチはヨークシャーテリア。もう人間の年齢にすると八十歳くらいになる。いまは自然がいっぱいの山の中で、マチと二人で暮らしている。マチは、いまなお食欲もあり、毎日散歩もして楽しそうだし、まだまだ元気だ。
彼と暮らし始めて、あまりにたくさんの出来事があった。まさに激動という言葉がピッタリだ。しばらく前まで、東京で暮らしていた時、楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、信じられない出来事、大きな変化――ずっとマチという不思議な存在の家族と一緒に過ごしてきた。マチがいてくれたから、ここまで生きてたどり着けた気がしてならない。諍いのない世界、誰もが手を取り合える世界。緩やかに後退する世界。こんな時代がやってくるなんて思ってもみなかった。
まるでマチが僕たちと出会ってから変化が始まった気がする。この十五年……僕は確かにマチと一緒に生き続けてきた。マチには少しでも長く生きていてほしい。本当に苦楽を共に過ごしてきたから。
マチはちょっと変わった犬だ。それは……
二 報告 マチ
期限が迫ってきている。この地球の時間であと半年。
結論を出して宇宙司令に最終の報告をしなければならない。
この星は生かす価値のあるものなのか?
僕の星では幸せという言葉はない。
宇宙では安定することが一番なんだ。
その安定を地球が侵し始めている。
でも、いまはおとうさんに
おもちゃというものを投げてもらい、
次にお腹をなでてもらって、
あまりに幸せな気分で、判断が鈍っている気がする。
次の交信は今日の夜!
宇宙司令は、きっと早く結論を出せ、と言ってくるに違いない。
半年なんてすぐにやってくる。
僕らの時間では、一か月にも満たない。
だから僕の六倍以上、人間はすぐに歳をとって老いていく。
なぜこの地球の生き物たちは
こんなに種類が多く、バラバラなんだろう?
ほとんどの星の生命体は単種か、せいぜい百程度だ。
この地では、植物も含め億単位の種が生活している。
宇宙ではとても珍しい存在。
この地に来た時、僕は驚いた。
交信できる生き物がこんなにたくさんいて、
混乱してしまうほどなんだ。
地球ではさまざまな思考や意識が飛び交う。
おとうさんの留守をみはからって、
精神だけを飛ばし、地球を俯瞰し生命たちと通じ合う。
あまりに複雑で無限大!
それを一気に拡張化された脳で受け取ると、
オーバーヒートしてしまいそう。
いままでいくつもの星に派遣されたけれど、
こんなに複雑で入り組んだ星は知らない。
その全貌を知ろうと、おとうさんが寝てしまった夜中に、
コンピューターという装置の
原始的なネットワークをこっそり見てみる。
その中の情報は意外と多く、
どれが本物なのか、正しいのかわからない。
とりあえず、それを全部記憶して整理して宇宙に送り出す。
ここでは最も高度と思っている生物、人間が
いつもいがみ合って、諍いを繰り返している。
それが僕には理解できない。
宇宙の星々の多くは平和という言葉はない。
みんなが協力して共生して生きている。
もちろん中には戦争をしかける輩はいるけど、
その意味のなさにすぐに気づき止めてしまう。
しかし、この地球では……
諍いが普通のことになってしまっている。
(以降、12日掲載予定の第2回に続く)