斉藤和義ほど、つかみどころのない音楽アーティストは類を見ません。もちろん「つかみどころがない」というのは悪い意味ではなく、良い意味で私たちをワクワクさせてくれるという意味です。斉藤和義をライブに一度でも体現した人であればわかると思いますが、MCでは下ネタ満載のトークを繰り広げ、どこか頼りない「隣のお兄ちゃん」といった佇まいが、いざギターを弾き始めると「完全なるロックスター」に変身してしまうのですから、どちらが本物の斉藤和義かわからなくなってしまうのです。
そんな斉藤和義は1966年に栃木県で生まれ、ファンからは「せっちゃん」の愛称で親しまれています。1993年にシングル「僕の見たビートルズはTVの中」でメジャー・デビューを果たしていますから、キャリアはすでは25年を超えています。デビュー直後から、音楽アーティストとしての力量は認められていましたが、一部の音楽ファンに限られており「歩いて帰ろう」「歌うたいのバラッド」など現在もライブで演奏されている人気曲は発表するものの大ブレイクまでには至りませんでした。
しかしながら、地道なライブ活動と親しみやすいキャラクター、フォークからパンクロックに至るまで非常に幅広い音楽性が評価され、徐々にファン層を拡大していましたが、2011年に発表したシングル「ずっと好きだった」「やさしくなりたい」にドラマ主題歌などのタイアップが付いたこともあり、大ヒットを記録します。さらには、元ブランキー・ジェット・シティのドラマー中村達也とユニット“MANNISH BOYS”を結成し、パンクロックファンをも虜にします。そして、2012年にはNHK『紅白歌合戦』に初出場を果たし、お茶の間にまでその存在を知らせることとなります。
斉藤和義の魅力は、その飾らない人間性と楽曲の良さ、そして何より独特の詞の世界観にあります。斉藤和義の楽曲に登場する人物は男性も女性も決して器用ではないけれど、正直で真っ直ぐに生きている人ばかりです。時にコミカルで切ないけれど、そんな愛おしい登場人物たちに感情移入できる楽曲こそが斉藤和義の音楽アーティストとしての最大の魅力なのです。