マウスの体細胞に遺伝子群を導入する代わりに、7種類の化合物を使う方法で人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作ったと、中国の北京大などの研究チームが18日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。
この「化学iPS細胞」は作製効率が0.2%程度で、ヒトの体細胞では成功していない。作製法を改善してヒトで実現すれば、遺伝子導入法より簡単に低いコストでiPS細胞を作り、利用できるようになるという。
山中伸弥京都大教授らが2006年にマウス、07年にヒトで皮膚細胞からiPS細胞を作った際は、「Oct4」など4種類の遺伝子を導入した。その後、作製法の改善競争が国内外で続き、遺伝子を一つずつ化合物に置き換えたり、遺伝子群の代わりにたんぱく質を導入したりする方法が開発されている。
北京大チームは11年、Oct4遺伝子と4種類の化合物でiPS細胞を作ったと発表。今回はOct4の代替化合物を約1万種類の化合物から探し出し、胎児や成体のマウスの線維芽細胞に7種類導入して作製した。このうち4種類でも作製できたが、効率は10分の1以下だった。
免疫不全マウスに移植するとさまざまな種類の細胞に変わり、受精卵が成長した胚に移植して母胎に戻すと健康な子が誕生したことから、万能細胞としての性質は、胚から作る胚性幹細胞(ES細胞)や4遺伝子導入法のiPS細胞と変わらないという。