料理ににんにくを使うことが多い。
オリーブオイルと炒め、香り付けをして食材を炒める。
煮物にも入れるしドレッシングにも入れる。
キッチンににんにくの香りが広がると食欲がそそられる。
今も、鶏肉の炒め物に使ったにんにくの香りが部屋に広がっている。
そんなにんにくに思い出がある。
あの日は、ロンドンの語学学校の友達の友達で
映画監督の方とお会いすることになっていた。
ロンドンでの生活は西側だった私は、その監督の住む北側は足を踏み入れたことがなかった。
当時、スマホなどない1996年。
乗換案内などは事前に調べておいても時間は読めない。
待ち合わせに10分ほど遅れた。
駅の出口でガードレールに腰かけていた監督は、
日本だったら女性が遅れてきたら待たないんだけどね、と一言。
そういう考え方をする人もいるのだな、と思ったが、このにんにくのことを思い出すたびにセットで蘇る。
監督が暮らしていたアパートはシェアルームで、大家さんと同じフロアでキッチンが共同。
この日は遅めのランチを作りながら監督の映画を見ようということで、簡単にサラダとパスタとチーズとワイン という献立だったが、監督がいうには大家さんがにんにく嫌いで、にんにく禁止らしい。
とはいえ、少しならね、と言いながらキッチンでパスタソース用ににんにくを炒め始めた監督。
すると、音もなく一室のドアが開き、スタスタと女性が出てきて、キッチンの窓を開けて戻っていった。
大家さんだった。
ね?
と監督は特に悪びれてもいなかった。
嫌いな人には申し訳なかった。