
「おかあさん 天国ってあるの?」
下の息子が私にそう質問したのは、
彼が8歳の時でした。
その頃の下の息子は、
とにかく疑問の多い子供で、
四六時中いろんなことを質問してきました。
「どうして空は青いの?」
「空気ないとみんな死ぬんやろ?」
という、一般的な質問から、
「河童さんは本当におるの?」とか
「カミサマってなに?」というものまで、
TVアニメ一休さんに出て来る
「どちて坊や」のようでした。
(何でもしつこく、どうして?どうして?と質問する
男の子のキャラがいたのです)
当時私は、そうやって質問される都度、
必ず何らかの答えを答えるようにしていました。
ただし息子はまだ8歳だったので、
それでも理解できるように
でも決して嘘はつかないようにと、
ほどほど噛み砕いて答える努力をしていたのです。
そして、いつかは子供達に
「天国」の話をするつもりでした。
しかし、簡単なようで奥の深い話なので、
まだちょっと早いかなぁ・・・と思ったものの、
質問されたからにはタイミングなんだろうと思いました。
私「天国はあるよ。」
息子「え~! 嘘やー。」
今でも、
この時のちょっと小馬鹿にしたような
息子の顔を覚えています。
8歳とはいえ、本も読んでいましたし、
TVも見ていましたので
(この頃はまだTVがあったのです)
彼なりに存在しないと思っていたようです。
私「あのねぇ・・天国も地獄もあるで。本当。」
息子「ならどこにあんの!?」
まさか”ある”と言われるとは
思わなかったのでしょう

一回目の反抗期を引きずっていた息子は
私が保育園の子供にサンタがいるよと言うように
自分を幼いと舐めてかかっているのだと思ったようです。
彼の顔には、
どうやって反発しようかという表情が浮かんでいました。
私は、これはとても大切な場面になったなと
ゆっくりと落ち着いた口調で離し始めました。
私「例えばね、お前はキムチ嫌いだよね?」
息子「だいっきらい。辛いやん。」
私「お兄ちゃんはキムチ大好きだよね?」
息子「おにーちゃんは、
毎日キムチでもいいってゆってんやん。」
うちの息子達は味の好みが正反対で、
上の息子は子供ながらに甘いものが苦手の超辛党。
対して下の息子は辛いものが一切ダメの甘党なのです。
私「じゃあね、朝・昼・夜と、
毎日全部キムチ味のご飯だったらどう?」
息子「えええ!!ヤダっ!!!」
私「お兄ちゃんはどうだと思う?」
息子「おにーちゃんは嬉しいんやん?」
私「そうだよね。
もしも毎日キムチ味のご飯しかない国だったら
お前は嫌だし他の味の物が食べたくて
苦しいし、辛いやろ?
そしたらそこはお前には
地獄の国なんじゃない?
でもお兄ちゃんには
ハッピーパラダイスだろうねきっと。」
息子「おにーちゃんはいいかもしれんけど
僕そんなとこ居たく無いわぁ!」
私「それならね、毎日あんたの好きな
アンパンばっかりの国だったら?」
息子「僕はいいけどおにーちゃんは・・
げええゲロォ…って言うわ。
だっておにーちゃん嫌いやもん、あんこパン。」
私「そうだね。
つまりな、天国も地獄もな、
そのコに合うとこが天国やん。
同じところにいても、
北極の白熊さんがな、
”アフリカ暖っかいでー”って連れて来られてみてごらん?
しんどいやろ?
寒いのが好きな白熊さんにはアフリカの暑さは地獄やで。
アフリカのキリンさんが
”涼しいでー”って北極に行ってごらん?
寒くてえんえん泣くよきっと。
そしたらキリンさんには北極が地獄や。」
息子「・・・そっかぁ。
ほんなら天国って国は無いん?」
私「みんな誰でもがな同じことだけを
嬉しいとか楽しいとか思えへんやろ?
だからな、”天国とはひとつではない”ってことなんや。
お前にとっての天国はあるし、
お母さんの天国もあるんよ。」
人はひとりづつ性質が違います。
その人の性質に応じたところが
その人にとっての天国なのでしょう。
不平不満だらけの人は
常に不平不満な環境にいないと落ち着きません。
だから常に重箱の隅をつついてみたりして
不満の種を探しているのです。
そういう人にとっては
不満だらけで愚痴をこぼしまくれる環境が
結局居心地が良いのです。
そうでない環境に置かれると、
それ事態が不安になってしまうという事も。
ところが、自分では
「暑いアフリカで苦しむ白熊なのだ」と思い
北極を探し求めていても、
本当は「居心地の良いアフリカにいるキリン」だった
なんてこともあります。
同じ場所にいても
そこを辛く苦しく感じるかは
その人次第ですが、
更にその人の「ココロの時期」次第でもあるでしょう。
同じ人が同じ場所にいても
時期が違えばそこが居心地良かったりすることも
あるのでしょう。
それは肉体を無くしても同じこと。
天国も地獄も、どちらも結局は、
私達の心が映し出した世界でしか無いのです。
だからこそ、
天国はこの世にもあり、
あの世にもあるのです。
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この記事は、
当時書いたブログを元にして、
方言を読み易くするなど
手直しして再録しました。
今でもこの会話をした時のことは
はっきりと覚えています。
懐かしい思い出です。















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