先日 世界を放浪中という
神戸からきた20代の男子 
修造くんとお目にかかりました。

彼は 元はF1レーサーを目指していたのだそうですが
体の不調が原因でその道から離れ
世界を巡る旅に出たのだそうです。
ベジタリアンでもある彼は
岐阜へはウーファー体験をしにやってきたのでした。
これまでアジア各国をめぐり
岐阜へ来る前は 
中国を旅していたのだそうです。

私がセッションの準備に入ろうかなとぼんやりしていると
修造くんが急に思い切った声で

「あの 教えてほしいんですけど」

と 声をかけてきました。

修造くんは 少し緊張したような顔をしながら
私にこう問いかけました。

「あの 間違った人生のくじをひいても
横の違うくじを引きなおせばなんとかなりますか?」

ああ 彼もいつか誰かに聞いてみたかったのだなぁと
私は 思わず苦笑してこう答えました。

「修造くん 間違いって何? 
誰が間違いと正しいの判定をするの?」

「いや、だって、ハヌルさんは
こっちに行くと間違っているからこっちへって
そう教えてくれるんでしょう?」

私は、彼の正面に改めて正座をして向き直り
そうして彼の瞳を見ながらこう答えました。

「熱い薬缶があったとするね
『熱いから触ったらあかんで!』と言うだけで 
これは危ないんだなとわかる人がいる

触って焼けどをして、これは危ないんだなとわかる人がいる

触って大やけどをして腕を無くして、危ないとわかる人がいる

そのどれも正解ではないし どれも間違っては無い
結局教えられていることは同じやからね
私はそれを話すだけなのよ」

一息に話す私の言葉を聴いているうちに
修造くんの表情からは
彼自身は意識していないのだろうけれど
ゆるい興奮がみるみる抜けていくのがわかります


「正解はないんですか?」

拍子抜けしたとでもいうような
彼の素を感じるその声色や
その様子をみていると
なんだか とても
私は幼い子をみているような
微笑ましいような気持ちになり

「すべて正解 すべて間違い 
そして そのどちらでもない」
 
と小さく笑うと

「私はな そう思うんやな」

そう答えたのでした。

修造くんは 一瞬 
ふぅむと考え込むと
わかりやすい喩えでしたわ と 
にっこりとした笑顔になりました。

正解 と 間違い。
それは どちらでもありどちらでもない。
なぜなら 
正誤を超えたものが
因果律を超えたものが
そこにあると知るために
私達はこうしてここにいるのだから。


そして 修造くんは
昨日の朝 再び
旅立っていったそうです。
次はヨーロッパへ行くと話していた彼。
ほんの一瞬のわずかな出会いではあるけれど
スピリチュアルな触れ合いの一こまでした。