幼き日
あの世界をテレビで見つけたとき
どうしようもなく何かがが
幼い私の胸を刺した

それがなんなのか
今でも私にはわからない

ただ 画面にうつる 遠い見知らぬ異国
過ぎていく風 流れ行く河 笑い踊る人々
遠い地平線 消えていく駱駝の商隊
どうして それがそんなにも
まだ 小さかった私の心を苦しめだのだろう


幼いながら自分で自分が恥ずかしかった
この幼い胸を締め付ける激しいせつなさは
そこを知っていると思うこの気持ちは
ただの妄想なのだと
ここではないどこかへ行きたいという
ただの幻想に過ぎないのだと


だから こぼれそうな涙をこらえて
ただ だまってじっと
テレビを見つめていた


今でも この歌を聞くと思い出す


乾いた土の香り
畳のにおい
食べかけた西瓜が生ぬるくなったあの味
遠くから聞こえてくる ちりんと鳴った風鈴の音
じじじ・・と鳴き騒ぐ蝉たちの声
ひとり 胸苦しさをかみ締めていた
やせっぽちのおかっぱ頭の小さな私


今でも 変わらぬ そのせつなさよ