翌日私とTさんは再び正義宮を訪れた
時刻は前日と同じ夜の22時30分
廟には昨晩と同じ人々が既に集まっていた
促がされるままに また13本の線香を求め
神々を拝んで回り そして
真っ赤な神さま用の紙ではさまれた
神仏専用の紙幣を炉で焚き上げる
神幣は一枚づつ炉の中の炭の上へとへ投げ込んでいく
100枚を焚き上げるころには
炉はごおごおと炎を巻き上げ
夜空へと墨色の煙を送り出していた
「こっちへ来なさい」
そう言われ 私達は壇の左隣におとなしくたたずむ
前日と同じようにタンキーは小さな座布団に座り
そしてどんどん激しい降神状態へと移っていっていた
怪我をしないように二人のサポーターが
さりげなく邸氏の周りに寄り添う
神が降りたタンキーは激しいゲップをしながら
物理法則を無視した動きや
肉体の常識を超えたポーズを軽々と続けつつ
私への答えを延々と語りつづけ
それを筆記専門のサポーターが
どんどんと紙へ書き留めていっていた
私の質問 それは簡単にいえば
「私はカミコトでお金をもらっていいのか」
ということに尽きた
私は自分のしていることにいつも疑念があった
人を騙しているのではないか
これは妄想の結果なだけではないのか
いやコールドリーディングではないのかと
いやいや 全てまぐれ当りなのだ
何しろ宝くじの当り番号だって答えられやしないのだ
何がありで何が無しなのか
比べることの頼りなさにおろおろしながら
他の仕事につこうとする度起こる激しい体調不良に
これは巫病の続きなのか
単なる精神病なのか
自問自答の日々を何年も送っていた
一般的に巫病は成巫の際のものとの認識が強い気がするが
実際中央アジアのシャーマンは
シャーマンの仕事からはなれようとするたびに巫病が起こるので
巫病というものが一度とは限らぬとも思ってもいたのだ
いきなりタンキーが私の頭に手を置いた
え?
何かを言っているのだが
台湾語のわからぬ私には何がなんだかわからない
なんだ? なんなんだ?
それを聞いた黄さんはとても怖い顔をしている
私はその黄さんの表情に何かただならぬ感じを受けた
「黄さん どうしたんですか・・・?」
あぁ やはり 私は詐欺だと今断罪を受けているのだ
どうしよう どうしたらいいんだろう
どうしたら 私を信じてくれた人々に罪を償えるのだろう
ああ どうしたら どうしたら
一瞬の間に私の思考は走り回る
「ハヌルさん あなたの頭には神様がいます」
は?
一瞬わけがわからなかった
「あなたのここ(前頭部)に神様がいると邸さんは言ってます
あなたは神様の仕事をする人なのです
邸さんが自分と同じ存在なのだと言っています
あなたには神がいます」
神様のしごと・・・・?
同じ・・・?
「あなたは生きて動く廟なのです」
・・・・生きて動く廟?!
「神様は廟に居ます
お供えのロウソク 線香 ともす明かりの電気代 掃除するためのお水
全てお金かかります
あなたの場合 あなたが生きて食べて暮らすこと自体が
そういうことをしているのと同じなのです
ハヌルさんは廟であり 人はあなたのところにいる神様にお金を送るのです
だから あなたは神様の仕事をしてお金をもらわなくてはいけないです」
「え・・私が生活していることがイコールになるのですか?」
「そうです あなたが生活をする 子供を育てる
それは 全て寺院で僧侶がご本尊に祈りつづけるのと同じなのです」
そんなこと あるのだろうか?
そんな都合のいいことって あるのだろうか?
そんなはず ないじゃないか
だって 私は詐欺師じゃないのかって・・・
「壇の前に座って目をつぶりココロを静かにしなさい」
こんなみんなが見ているところで?!
私は露骨に動揺した
「いいから 座りなさい」
命令されて仕方なく私は
さっきまでタンキーが座っていた座布団に腰をおろす
「胡座かいて目をつぶりなさい」
スパッツをはいてて良かった
ジーンズだったらムリだなぁ などとどうでもいいことを思う
「あなたが普段行っている廟は誰の廟ですか?」
「(寺とか神社のことかな・・?)あちこちですが大体3箇所が多いですけど・
・
観音様のところにいくのが一番多いです 最初に呼ばれたような気がしたのがそ
こでした」
「あなたは夢の中で誰かに呼ばれて返事をしたことはありますか?」
「・・・わかりません 記憶にはありません」
「写真などに何か写したことがありますか?」
「携帯で写した空に眼でみたときにはわからなかったのに
光ってとぐろを巻きながらこちらへ飛んでくる龍にとても似ているものが写った
ことがあります」
「では 目を閉じたまま静かにじっとして神を観じなさい
あなたと縁の深いのが誰なのかわかるはずです」
ここ3日ほどまともに寝ていなかった私はとても疲れていた
右側からは付けっぱなしのテレビが台湾の歌謡ショーをがなる音が聞こえていた
すぐ左ではTさんが黄さんに通訳されながら
地元の人たちにあれこれ話し掛けられている声がしている
後ろの方ではざわざわと歩く音や笑いさざめくおばさんたちの声がする
こんなところで瞑想しろっていわれてもできっこないよ
私は心のなかで不満をもらした
+++++++++++++++<9へ続く・次回最終回>
時刻は前日と同じ夜の22時30分
廟には昨晩と同じ人々が既に集まっていた
促がされるままに また13本の線香を求め
神々を拝んで回り そして
真っ赤な神さま用の紙ではさまれた
神仏専用の紙幣を炉で焚き上げる
神幣は一枚づつ炉の中の炭の上へとへ投げ込んでいく
100枚を焚き上げるころには
炉はごおごおと炎を巻き上げ
夜空へと墨色の煙を送り出していた
「こっちへ来なさい」
そう言われ 私達は壇の左隣におとなしくたたずむ
前日と同じようにタンキーは小さな座布団に座り
そしてどんどん激しい降神状態へと移っていっていた
怪我をしないように二人のサポーターが
さりげなく邸氏の周りに寄り添う
神が降りたタンキーは激しいゲップをしながら
物理法則を無視した動きや
肉体の常識を超えたポーズを軽々と続けつつ
私への答えを延々と語りつづけ
それを筆記専門のサポーターが
どんどんと紙へ書き留めていっていた
私の質問 それは簡単にいえば
「私はカミコトでお金をもらっていいのか」
ということに尽きた
私は自分のしていることにいつも疑念があった
人を騙しているのではないか
これは妄想の結果なだけではないのか
いやコールドリーディングではないのかと
いやいや 全てまぐれ当りなのだ
何しろ宝くじの当り番号だって答えられやしないのだ
何がありで何が無しなのか
比べることの頼りなさにおろおろしながら
他の仕事につこうとする度起こる激しい体調不良に
これは巫病の続きなのか
単なる精神病なのか
自問自答の日々を何年も送っていた
一般的に巫病は成巫の際のものとの認識が強い気がするが
実際中央アジアのシャーマンは
シャーマンの仕事からはなれようとするたびに巫病が起こるので
巫病というものが一度とは限らぬとも思ってもいたのだ
いきなりタンキーが私の頭に手を置いた
え?
何かを言っているのだが
台湾語のわからぬ私には何がなんだかわからない
なんだ? なんなんだ?
それを聞いた黄さんはとても怖い顔をしている
私はその黄さんの表情に何かただならぬ感じを受けた
「黄さん どうしたんですか・・・?」
あぁ やはり 私は詐欺だと今断罪を受けているのだ
どうしよう どうしたらいいんだろう
どうしたら 私を信じてくれた人々に罪を償えるのだろう
ああ どうしたら どうしたら
一瞬の間に私の思考は走り回る
「ハヌルさん あなたの頭には神様がいます」
は?
一瞬わけがわからなかった
「あなたのここ(前頭部)に神様がいると邸さんは言ってます
あなたは神様の仕事をする人なのです
邸さんが自分と同じ存在なのだと言っています
あなたには神がいます」
神様のしごと・・・・?
同じ・・・?
「あなたは生きて動く廟なのです」
・・・・生きて動く廟?!
「神様は廟に居ます
お供えのロウソク 線香 ともす明かりの電気代 掃除するためのお水
全てお金かかります
あなたの場合 あなたが生きて食べて暮らすこと自体が
そういうことをしているのと同じなのです
ハヌルさんは廟であり 人はあなたのところにいる神様にお金を送るのです
だから あなたは神様の仕事をしてお金をもらわなくてはいけないです」
「え・・私が生活していることがイコールになるのですか?」
「そうです あなたが生活をする 子供を育てる
それは 全て寺院で僧侶がご本尊に祈りつづけるのと同じなのです」
そんなこと あるのだろうか?
そんな都合のいいことって あるのだろうか?
そんなはず ないじゃないか
だって 私は詐欺師じゃないのかって・・・
「壇の前に座って目をつぶりココロを静かにしなさい」
こんなみんなが見ているところで?!
私は露骨に動揺した
「いいから 座りなさい」
命令されて仕方なく私は
さっきまでタンキーが座っていた座布団に腰をおろす
「胡座かいて目をつぶりなさい」
スパッツをはいてて良かった
ジーンズだったらムリだなぁ などとどうでもいいことを思う
「あなたが普段行っている廟は誰の廟ですか?」
「(寺とか神社のことかな・・?)あちこちですが大体3箇所が多いですけど・
・
観音様のところにいくのが一番多いです 最初に呼ばれたような気がしたのがそ
こでした」
「あなたは夢の中で誰かに呼ばれて返事をしたことはありますか?」
「・・・わかりません 記憶にはありません」
「写真などに何か写したことがありますか?」
「携帯で写した空に眼でみたときにはわからなかったのに
光ってとぐろを巻きながらこちらへ飛んでくる龍にとても似ているものが写った
ことがあります」
「では 目を閉じたまま静かにじっとして神を観じなさい
あなたと縁の深いのが誰なのかわかるはずです」
ここ3日ほどまともに寝ていなかった私はとても疲れていた
右側からは付けっぱなしのテレビが台湾の歌謡ショーをがなる音が聞こえていた
すぐ左ではTさんが黄さんに通訳されながら
地元の人たちにあれこれ話し掛けられている声がしている
後ろの方ではざわざわと歩く音や笑いさざめくおばさんたちの声がする
こんなところで瞑想しろっていわれてもできっこないよ
私は心のなかで不満をもらした
+++++++++++++++<9へ続く・次回最終回>