この地球上には常に争いがある
この地球上には常に苦しみがあり悲しみがある

あちらこちらからあがる怨嗟の声
彼方より来襲する絶望
昨日を断ち切られ
明日を切り捨てる

腐りゆくひとであったもの
その膿をすすりて のたうつもの
怒り うらみ 呪い
聞こえない絶叫
もはや流れぬ涙
頭を踏みにじられた赤ん坊が
最後の息を吐くそのときに
一体何を思うのだろう

私は無力だ
ここで ただ 
自分が無力だと知ることしかできない
世界中で今この瞬間に起こっている
全ての苦しみ悲しみを
私は想像することしかできない
テレビ ネット 新聞のニュース
視覚や聴覚に訴えるこれらは
ただ情報を伝えるだけだ
感情を刺激されるだけにすぎない

たとえ同調し
それを体感したとしても
それは私の経験ではない
感覚を共有しても
それは私の身に降りかかったことではないのだから
そのほんのひととき
理解したような気分を味わうだけなのだ

それでも私は願った

「どうかお願いです
もう終りにしてください
私は十分汚れ穢れています
ですからどうぞ全てを私の身に与えてください
お願いします もう十分ですから
どうぞ全てのこの世の苦しみを
私だけに与えてください」

何も出来ない私は
何も出来ない苦しさから逃れたかった
そう ただ自分の苦しさから逃れるために
私は世界の全ての苦しみを
自分に与えろと願ったのだ
こんなものは
ただの自己満足だと知りながら
いや 知っているからこそ
祈りの無意味さを思い
ただ願ったのだった

私が生きる小さな「世界」は
何もかもがいっしょくたになり
天使も精霊も悪魔も仏陀もハイヤーセルフも
憎しみも悲しみも喜びも嬉しさも
混沌の中に息づいている
絶望と希望の重さは同じだ
光の速度と影の速度は引き合っている
その全ては意味を持ち
そしてなおかつ意味を持たない

私はあまりに小さい
だからこそ
誰かのために祈ることはできない
何かのために祈ることはできない
そこに自分の満足を
そこに自分の快楽を見つけてしまうから
自分のために祈ることしか
私には出来はしないのだ

そして私がどう思おうと
どう感じようと
感情がどれほど沸き立とうとも
それでもすべてに光が降り注ぐのが観える

踏み殺される赤ん坊に
足蹴にしているその男に
頭を吹っ飛ばされた老人に
銃を向けた兵士に
レイプをしているひとに
捕まえられ手足をもがれたひとに
光は降り注ぐ
それが私にとっての現実だ

けれどその苦しみに
私は語りかける言葉すら持てはしない
その悲しみに
私は分かった顔すら出来はしない
今 ここにいる私には
ただ事実として知るしかできないのだ


今はもう愚かな願いはしない
喜びと苦しみの世界の果てで
恥じる自分を見たくはない


今日も私は
自分の偽善と欺瞞を
見つめている