ベル


偶然手に入れたロータスのベル
ティンシャと迷いながら
結局こちらに決めたのは
その音を聞き始めた途端
非常に強い浄化力と強力な覚醒作用を感じたから

チベットの僧侶のように
木の撥を手にとり
静かにそっと端を撫でた瞬間
高く低く漏れ出す倍音
ひとこすり毎にその音は巨大な波となり
それはまさに津波のごとくうねる
私の瞳孔は開き
魂は脳髄の檻の中で覚醒する
手に入れたときは知らなかったけれど
このベルはバリ島でヒンドゥー教のお祈りの儀式の時に
高僧が使用するベルなのだそうだ

銅と22カラットの金を混ぜてこの真鍮のベルを作ったのは
「パンデ」と呼ばれる特殊な職人の1人
バンデとは 先祖代々に受け継がれてきた特殊な技術を守る
特別な鋳物職人たちが属するカーストで
彼らはこのベルを作るのに
今も伝統的な慣わしを大切に守っているらしい
必ず満月の時に作り始め 
たった1つのベルを作りあげるのに2ヶ月はかかるのだという
彼らは1つの段階が終わるごとに
その清浄さ純粋さを保つために
バリの神々に供え物をし
丁寧に丁寧に神に仕えるかのごとく
仕上げていくのだ
そうして仕上がったこのベルは
やがて高僧の手による祈祷と儀式を受け
自在に清らの音声(おんじょう)を奏でるのである

私は普段他者に対する浄化の際に
何かの道具を使うことはない
けれどこの金剛鈴は
いづれセッションで使用する予定だ
時折私にはこういうときがある
普段の現実主義はどこへ行くのか
なんの迷いもなく感情もなく
ただ確信がある
疑いようのないその確信に動かされて
今日もひとり わんわんと
倍音の波に洗われる私だった