とにもかくにもようやく私のところへと
朋子はたどり着き
ここのところ自分に降りかかっているらしき
さまざまな出来事を語って聞かせてくれた

結局その日から2泊3日で
私と行動をともにしている間に
彼女はどんどんと霊的感応力を増していき
私と一緒にいるときは まだましなのだけれど
私といないときには
ありとあらゆるところに
目に見えぬモノどもを見るようになっていた
そしてそれはすべて
死霊であったり
生霊であったり
邪気の噴出したものが凝り固まったものや
邪気どころか瘴気であったりして
けして観て楽しいものではなかったのだ
四六時中まるで
何かの恐怖映画の中に住んでいるかのごとき
日常へと変化してしまったのである

朋子はこうなってしまってから
年越しを挟んで約一月半の間
週の半分を岐阜ですごし
週の半分を東京で過ごすという生活を続けていった
東京でそういったものに囲まれてすごすのは
彼女には少し耐えがたかったのである
そしてこちらに滞在する間
彼女は感じる力を増すだけでなく
それらを打ち破る方法を自ら会得していっていた

そんなあるときのこと
その日は朱珠ちゃんも遊びに来ているときだった
お客さんとはいっても勝手しったるこの二人のこと
私は甘えさせてもらうことにして
すべての窓を全開にして
家中の部屋を掃き そして拭き清め
掃除をしていた
(私は普段箒で掃き床もたたみも
水ぶき仕上げするので必ず窓は開けている)
天気もよく晴れた暖かい日で
開け放った北側の窓からベランダへと
かなり強い風が吹き抜けていた

そこへ朋子が私も手伝うといって
私のところへやってきた
しばらくすると突然妙なことに気がついた
部屋の中に異臭が漂っているのである
それは生暖かいような生臭いような
埃と何日も風呂にはいっていない男か
まるで動物の体臭が混じったような
なんともいえない変な臭いだ
おかしいなと思いつつも
ついその前日までうちに泊まっていた
Y介の残り香かなぁとそのときは気にしなかった
Y介はかなり体臭がきつい男で
また相当癖のあるタバコを吸っていて
てっきりこの鼻をつく異臭が
彼の残していった荷物のせいだろうと思ったのだ
そのときは朋子も朱珠ちゃんも
Y介の臭いだよ!と言いあっていた

Y介の荷物を処分して私は子供部屋へと移動した
子供部屋は一番風が吹き込む部屋で
部屋の中のものが舞い上がるほど強く風が入ってきていた
遅れて朋子も手伝いにやってきた
私は出窓の上を拭こうと雑巾をもち
窓の前に立ち風にあおられながら掃除をし始めた
すると突然さっきよりも激しい異臭が鼻を打ったのである
しかも その異臭は出窓のまん前ではにおわずに
出窓から30センチほど中へ入ったところから
まるで湧き出しているかのごとくに激しく臭いだしていた
これにはさすがに普通のことではないと気がついた
この部屋にはY介ははいっていないし
何よりこんなに風が吹き込んでいるにもかかわらず
なぜこの場所だけが臭うのか
しかも臭うものはなにひとつないのに
私は少しいやな気持ちがしていた

*************続く