たった5日で東京から再び岐阜へと
朋子は舞い戻ってきた

彼女は一度名古屋までバスで行き
そこから名鉄に乗り換えて
我が家に一番近い
日本ライン今渡という駅までやってくるのだが
実はそのときも少し困ったことになっていた

通常であれば名古屋からココまでは約1時間
乗り合わせが悪くても1時間30分あれば
まぁたどり着く場所だ
それがその時の彼女は何故だか
何時間たっても今渡の駅にたどり着けなかったのだ
朋子は決して方向音痴ではない
ましてやかつてしょっちゅうコチラに来ていたので
かなり勝手知ったる土地なのだ

それが名古屋駅でまず駅員に
今渡駅に一番早く着く電車はどれかと 彼女は尋ねたところ
その駅員は

「あぁ 今止まってるこれ これに乗ってください」

と 答えた

「日本ラインってとこなんですけど 間違いないですか?」

と 重ねて尋ねるのだが

「大丈夫です 今渡はこれでいけます」

という上に

「これ本当は10分発急行なんだけど 
今12分なのに乗れて運がいいね! 早く乗って!」

と 彼女はその電車に押し込められた
途端に電車はドアを閉めすべるように走り出す

しばらくするとすることも無いので
朋子はいつものように念のため
ドアの上にある路線図を眺めていた

あそこが 今渡だから 今どこだろう?

するとタイミングよく車内アナウンスが流れる

次は~●●~●●~

朋子はそれを聞いて あれ?と思う

彼女の見ている今渡への路線には
そんな駅名がないのだ
おかしいと思いつつも まあ見逃しているのかなと思う
しかし次の駅名もやはり載っていない
その時点で彼女は慌てて私に電話をしてきた
(良い子はマネをしてはいけません)

「もしもし?! なんか次 ●●っていってるんだけど!」

それを聞いて私は驚いた
彼女はまったく違う路線にのせられていたのだ
仕方が無いので一度名古屋へと戻ってもらい
再度乗りなおしてもらうことになった

ところがである
今度もまたストレートにたどり着けないのだ
名古屋で再び駅員に
くどくどと確認して乗ったのだが
結局これまた違う駅でおろされてしまったのである
おろされたホームで彼女は
仕方なくまたそこにいた乗客に
犬山方面はどちらのホームかと尋ねてみた
するとそのお客は朋子の顔をみるなり
引きつった顔で走って逃げたのだ
仕方なしにもうひとりいた若い男性客に尋ねると
その男も知らないと叫びながら
ホームを走って横断して逃げてしまったのである
朋子はすっかり不安になってきた

朋子は元々とても行動力のある女性で
ふらりと一人でニューヨークへ旅立ったり
思いつきで明日台湾など
まったく平気な女なのだ
それもこれも
彼女は知らない土地でも道に迷うということがまず無いし
なにかあって人にモノを尋ねるときでも
大手企業の受付嬢をしていたくらいなので
とても美人で受けがよく
たいていの人は彼女のことを助けてくれるのだ
それがどうだろう
たかだが 名古屋から私に会いにいくだけで
何故こんなに迷うのだろう
尋ねれば違うところへいくはめになり
しかも逃げられてしまう
なにかがおかしいのだ
こんなことはありえなかった
結局彼女が私と会うまでに
12時間近くの時間がたっていた

++++++++++++続く