物心ついたときから
私は自分の人生がこれ一回ではないと
なぜかはっきりと確信がありました

どうしてそんなことを考えていたのかわかりません
いえ 考えていたわけではないのです
空が青いように
地面が平らなように
私はまた生まれてくるのだと
はっきりと思っていたのです

私には様々な過去生の記憶だろうというものがあります
前回ここに書いた傾城時代もそのひとつです
どの人生でも私は必ず
「私は孤独で無力だ」という思いに突き動かされることにより
様々に生きてそして死んで行きました

このさまざまな記憶を
長い間誰かに話すことはありませんでした
けれどいろいろな出会いによって伝えられた
いわゆる私の前世とされるものは
私の記憶と重なっていました
しかし私にとって
それは何も意味を持ちませんでした
今年になるまでは

今年になって怒涛のような出来事が私を襲っています
その中でみれば
こんな言い方は申し訳ないのですが
母の病はその中のひとつにすぎ無いほどです
あまりのことの連続に
私は久しぶりに逃げ出したくなりました
無に還りたい と
けれどミエナイ世界を理解してしまった今では
薬に逃げることも何もかも
意味が無いとわかっていました

そしてある時はっとしました
私が望む脳裏に浮かんだ様々な形の逃避は
すでに今回の人生でやっていることか
過去生の中でやってきたことばかりだったのです

かつて
家族に縛られてるから苦しいのだと
みずから家族を捨て旅にでました
人並みの家庭を持つことを選ばずに
一人洞窟で暮らしました
すべてを許し受け入れるために
みずから犠牲者になりました
人を導く責任から逃れ
精神を破壊しました
女であることを拒否し男になりました
男であることすら拒否し
人であることを拒否し
虫になりました
人を殺しました
人に殺されました
犠牲になり
犠牲にしました

そして私はまた同じことをしようとしていました

自分の尊厳を持つこと

それが私の今すべきことでした

すべてを受け入れ許すことが愛ではありません
それを知っていながら私はまた
同じ迷路へ入ろうとしていました

過去生の記憶が教えてくれたこと
それは
同じことを繰り返さないということ
痛くても苦しくても
その壁に正面から素直に向かうこと

そのとき
そびえる壁は消えさり
そこには
大きな扉があることに気が付くのです
扉は必ず開かれます
前に立つものが
開く意思がある限り
必ず開かれます

そうして私は
新しい分岐を迎えたのでした