「私の前に立ってください」

人もまばらになりゆく午前3時の台北
夜市のテーブルで始まったリーディングは
絡みつく女の因果を知らせるものだった
立ち上がった彼の脚がよろけたのは
飲みすぎた酒のせいなのか
それとも夜気に潜む「常ならぬもの」のせいなのか・・
「ひゅぅううぅうぅうううぅううぅ」
深夜 亜細亜の片隅 台北で
台湾小姐の生霊と私ハヌルの対峙が今始まる
公開リーディングin台北 第5話 スタート


シリーズ「公開リーディングin台北」 こちらから一気にどうぞ 
→第壱話  →第弐話  →第参話  →第四話
※とんでもはっぷん(古)な妄想話? これが残念ながら実話なんです



ゆらん ゆらり ゆらん
男の胸の前で私の手がふわふわと動き回る
ときに 何かを切るかのように
ときに 何かをなでまわすかのように
そうかと思えば
空中から何かを受け取るようにも見え
またくるくると見えない錘を転がすかのように
忙しく腕は宙を舞う
その姿を旗からみれば
まるで何か酔っ払いのおばさんが
一人調子外れなへたくそな踊りでも
踊っているかのように見えるだろう

しゅぃぃひゅぃぃいいいいしゅぅうぅうぃい

絶え間なくもれるのは岩笛にも似た
ひゅぃひゅぃという私の唇の立てる音

林さんの前にたったときから
私の右腕は絢爛と閃光をはなつ金の焔の剣と化していた
もちろんそれは誰の眼にも映らぬ幻であり
私にしか見えぬ不思議が見せるものでしかない
そうこれは今この男林氏の縁をほどくために私の背中へと降り立った
「あのお方」の波動が私の腕に現れている姿であり
私の脳の情報処理の結果で光の剣の形にみるのだろう
そしてこれはあえて言うなら
降魔と破邪の力に属す力の波なのだ

林さんの体を包み込んでいる瘴気の膜を
少しずつ開いていく
そっとそっと優しく丁寧にすこしずつ
まるでババロアのような手ごたえの澱みを
周りのやわやわとした瘴気を徐々に解かして夜気に流していく
慌ててはいけない
慌てては崩れて道筋を見失ってしまう
丁寧に優しく そして澱みの流れに逆らわぬよう
そっと隙間に手を忍ばせる

・・・頃合かな

後ろを向かせた男の
正中線に沿って見えない刃を振り下ろす

つっっっっっっついっ
ぶるんっ

半透明のゼリーのような澱みの真中に
ぱっくりと裂け目があわられた
裂け目の両端はぶるぶると震えている
まるで紙ですっぱりと切った指先のように
血は流れていないけれども
それはどことなく深くて痛い傷口のように見える
澱みはまだまだ鈍く
浅い意識しかないけれど
それでも自分を保存しようと
ゆっくりその傷を閉じようとするだろう
私は両手を深く差し込み
澱みに意識を与えぬように
そうっとそして
力強く開くべき場所を
押し開いていった

・・・視えた

一番おくの最深部には
そこだけ鮮明な色に観える
林さんの本体が細く現れた


ぐわん ぐわん ぐわん ぐわん

シンバルの音がこれでもかと
大音声を喚きたてている

おーん のうまくさんまんだばざらだん・・

ごぉぉん ごぉおおん
私の体は焔と燃え盛る

おーん あびらうんけんそわか・・

胸の奥底から
激しい喜びが迸り肉の外へと噴出していく

さぁ いこうか

にこにこと微笑む私の目の前
澱みの狭間にあらわれた林さんの体から
白い糸のような小さな蛇がゆらゆらと立ちあがり始めていた

--------------------------------------------(続く)


精神世界ランクばなー
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