ゆうべシャワーを浴びているときに
ふっと昔のことを思い出した
それはいまからもう11年前の出来事だ
その夜私はひとりお風呂に入りのんびりしていた
当時の私はぬるい湯船に身を浸して
ひたすらぼんやりとすることが習慣で
家で風呂にはいるときは2時間ほど浸かっていることが多かった
湯に浸かるうちはじめは忙しく動き回っていた思考の渦が
どんどんと遠心力をまして大きくなっていく
知らないうちにいつも何も頭には浮かばなくなり
体の感覚も忘れ湯との境も消えていき
まるで無とでもいうような状態にはいるのだった
体がゆるゆるに溶けてしまったようなその感覚に耽るのが
私はとても大好きだった
その夜の私もそうやって随分長い間ぼんやりしていたのだが
はっと我に返るとすっかり湯船の湯が冷め切っていて
唐突に体も完全に冷えてしまっていることに気がついた
・・・・・・寒っ これは風邪を引くかも・・
慌てて蛇口をひねり熱いシャワーを頭から浴び始める
その頃の私は週のうち3日ほどを
後に夫となる彼氏の部屋で泊まっていたのだが
彼の部屋はなんと男性専用マンションな上に
共同シャワーしかないところだったので
彼に見張ってもらいながら急いで浴びることしかできず
風呂好きだった私にとって彼に会えないことより
家でゆっくり独りで入れることのほうが嬉しくて
ついつい必要以上に浸かっている傾向があった
湯船の湯どころか浴室の温度もすっかり下がってしまい
私は寒さに身震いしながら熱めのシャワーに頭を突っ込み
シャンプーの下洗いをするために頭皮を指でごしごしとマッサージをはじめた
私は髪の量が常人よりかなり多く(美容師談)
しかも腰まであるロングスタイルをしていたので
ちょっと濡らした程度ではまったく頭皮までお湯が通らず
シャンプー液をつける前には かなりしつこく時間をかけて
お湯をざんざん浴びながら湯を通すのが習慣だった
それもただ濡らすだけの目的ではなく
水溶性の汚れを落とすのと頭皮のマッサージをかねていて
かなりゴシゴシじゃばじゃばとやらないと気がすまないのだ
ばっしゃばっしゃと激しく水音を立てながら
私はをまた日々のよしなし事を忙しく考えはじめていた
そのときである
○△○○△・・
何か 聞きなれない音が鼓膜を揺すった
しかし頭のほんの隅っこで聞こえたそれを
そのとき考えに耽っていた私はすいっと流した
すると 唐突にまた
○△○△○○△!
一瞬はっきりと飛び込んできた
そう それは人の声だった
バスルームには 私は当然ひとりである
不審に思いながら
何かの音 そう 例えば水はねの音とか
きっとそういったなにかを聞き違えたのだろうと思おうとした
考え事に耽っていたから聞き間違えたに違いないと
再び 今度は集中しながら
わざとシャワーの音でほかの音が聞こえぬように
ざあざあと頭を洗い始めた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く
ふっと昔のことを思い出した
それはいまからもう11年前の出来事だ
その夜私はひとりお風呂に入りのんびりしていた
当時の私はぬるい湯船に身を浸して
ひたすらぼんやりとすることが習慣で
家で風呂にはいるときは2時間ほど浸かっていることが多かった
湯に浸かるうちはじめは忙しく動き回っていた思考の渦が
どんどんと遠心力をまして大きくなっていく
知らないうちにいつも何も頭には浮かばなくなり
体の感覚も忘れ湯との境も消えていき
まるで無とでもいうような状態にはいるのだった
体がゆるゆるに溶けてしまったようなその感覚に耽るのが
私はとても大好きだった
その夜の私もそうやって随分長い間ぼんやりしていたのだが
はっと我に返るとすっかり湯船の湯が冷め切っていて
唐突に体も完全に冷えてしまっていることに気がついた
・・・・・・寒っ これは風邪を引くかも・・
慌てて蛇口をひねり熱いシャワーを頭から浴び始める
その頃の私は週のうち3日ほどを
後に夫となる彼氏の部屋で泊まっていたのだが
彼の部屋はなんと男性専用マンションな上に
共同シャワーしかないところだったので
彼に見張ってもらいながら急いで浴びることしかできず
風呂好きだった私にとって彼に会えないことより
家でゆっくり独りで入れることのほうが嬉しくて
ついつい必要以上に浸かっている傾向があった
湯船の湯どころか浴室の温度もすっかり下がってしまい
私は寒さに身震いしながら熱めのシャワーに頭を突っ込み
シャンプーの下洗いをするために頭皮を指でごしごしとマッサージをはじめた
私は髪の量が常人よりかなり多く(美容師談)
しかも腰まであるロングスタイルをしていたので
ちょっと濡らした程度ではまったく頭皮までお湯が通らず
シャンプー液をつける前には かなりしつこく時間をかけて
お湯をざんざん浴びながら湯を通すのが習慣だった
それもただ濡らすだけの目的ではなく
水溶性の汚れを落とすのと頭皮のマッサージをかねていて
かなりゴシゴシじゃばじゃばとやらないと気がすまないのだ
ばっしゃばっしゃと激しく水音を立てながら
私はをまた日々のよしなし事を忙しく考えはじめていた
そのときである
○△○○△・・
何か 聞きなれない音が鼓膜を揺すった
しかし頭のほんの隅っこで聞こえたそれを
そのとき考えに耽っていた私はすいっと流した
すると 唐突にまた
○△○△○○△!
一瞬はっきりと飛び込んできた
そう それは人の声だった
バスルームには 私は当然ひとりである
不審に思いながら
何かの音 そう 例えば水はねの音とか
きっとそういったなにかを聞き違えたのだろうと思おうとした
考え事に耽っていたから聞き間違えたに違いないと
再び 今度は集中しながら
わざとシャワーの音でほかの音が聞こえぬように
ざあざあと頭を洗い始めた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く