朝子供たちを送り出すと
ゆっくりとシャワーを浴びる
甘い香り 
爽やかな香り 
癒しの香り
その日の思いのままに
仕上げのクリームを素肌に伸ばす
見上げれば空は青く
揺れる木々の緑は萌え映ゆる

生きているんだなぁ・・・・

心の底からそう思う
同じ空をみていたはずの
あの日々に
私は何を見ていただろうか

目覚めては酒で薬を流し込み
粉を鼻から吸い上げる
体中をカッターで切りつけながら
ゴミの中にただ倒れ転がっていたあのころ
私の世界は爛れ腐り果てた
絶望とか憎しみとか
そんなものさえそこには無かった
何かわからぬものが私を支配して
滑稽な一人芝居を演じては
血を流しそして崩れ倒れる
私は転がった私の体をずっと眺めていた
感情ももたずただ見つめていた

主人を殺そうと
首にかけたベルトに力をこめた
あのとき見たあの空も
自らを切り刻み
血だらけの手の平で
透かして見上げた空も
あまりに青くて
あまりに青くて
私は罪に怯えた

世界はいつも変わらない
言い訳をして逃げ道を作り
自分の正当性だけを主張して
誰かが何かをしてくれるのを待っている

きっと世界は変わるはず
本当の私はこうじゃないはず
誰かが幸せにしてくれるはず

損をしたくない
損させられたくない
私が愛した分だけ愛してよ

そうじゃない
世界はいつも変わらないから
私も今の私で全部すべて
本当の私なんかどこにもいない
ここにいる情けなくて惨めで哀れで
もがいて生きている私で全部だ
人には見せない本当の私なんて
実際は私の中のほんの一部に過ぎない
息をして眠るこの私で全部
損も得も 幸も不幸も
目先の一瞬じゃ決められない
この先も また生まれ変わっても
ずっと「生」は続いていく
ずっと「変化」は続いていく
そう 世界はまだ創世記の途中なのだから

そしてベランダに立ち
またあの青い空を見上げる
遠い日の私に微笑んで

輪廻の中で私は踊る
もういちど生まれたとしたら
もう一度私でいたい
もういちど血を流し 
人を傷つけ
自分を傷つけ
そうやって生きてきたい

空の下小さな声で歌うnobodyknows+
大地に根ざした木のように
私はここにたち続けている