一瞬はっきりと飛び込んできた
そう それは人の声だった
いや人の声のように聞こえた気がした
けれど それはありえなかった
私は独りきりでお風呂に入っていたのだし
普段シャワーで洗髪中にドアの向こうから声をかけられても
まず気がつかないので
用がある際の我が家では
家人はみな浴室のドアを遠慮なくがらっと開けて
そうして大声で何度も声をかけるのが常だったのだ
しかしうつむいたまま背中の様子を探っても
ドアが開いた気配はまるでなかった
さてご自分が頭からシャワーを浴びているところを
想像していただければおわかりだと思うのだが
頭から浴びたときヒトはその水音の流れる音に吸い込まれてしまう
頭を洗いながら会話をするのは案外に難しいものだ
銭湯などで経験あるかたも多いのではなかろうか
そしてこの家の場合単にシャワーの流水音だけではない
私の実家のお風呂は
灯油をボイラーで焚いて湯を出す方式で
シャワーを使っている間
ごおぉんごん! どん!!ごおぉん!と
かなり激しい音がする
当然シャワーで洗髪をしているときには
浴室のドアを開けて大声で声をかけられても
水音とそのボイラーの音で殆ど気がつかないのが常だったのだ
まあ 気のせいだろう
私は気持ちを再びそらそうとした
するとまたも
『わ○△○あ○△○ね』
明らかに声がして
私はとっさに振り向いた
浴室の擦りガラスの向こうで
もしかして母が声をかけているのではないか?
しばらくじっと見つめていても
ガラスの向こうで動くものの気配はまるでない
いったい なんなのか
少々不審に思い始める
明らかに 人の声だった
いや 「人のように聞こえる声」だった
気のせいなのだろうか・・・?
気のせい・・・なのだろう
風邪を引いてしまう 早く洗おう
再びシャワーに頭を突っ込む
するとまた
「わたし○△○△○○よ!」
もう気のせいではなかった
誰かに話し掛けられている
しかも今度は 繰り返し2度3度と同じ言葉を言っている
けれど どれだけ振り返っても見回しても
浴室には私はひとりっきりだった
何が言いたいのだろうと 私は少々いらだちだした
その声は人の声に似ていたけれど
発する言葉がもやもやしていて
最初と最後の部分しか明瞭に聞き取れない
一体 なんなの!寒いのよ!
言いたいことがあるんならはっきり言って頂戴!
いらだった私は
またまたシャワーに頭を突っ込み独りごちた
すると今度は明瞭な声でこう話し掛けられたのだ
『わたしあ○○ちゃんよ よろしくね』
あ・・・?
『私は 吾が子』
は?
『わたし赤ちゃんよ よろしくね』
・・・・は???
赤ちゃん?なに?
私は意味が分からなかった
--------------------続く
そう それは人の声だった
いや人の声のように聞こえた気がした
けれど それはありえなかった
私は独りきりでお風呂に入っていたのだし
普段シャワーで洗髪中にドアの向こうから声をかけられても
まず気がつかないので
用がある際の我が家では
家人はみな浴室のドアを遠慮なくがらっと開けて
そうして大声で何度も声をかけるのが常だったのだ
しかしうつむいたまま背中の様子を探っても
ドアが開いた気配はまるでなかった
さてご自分が頭からシャワーを浴びているところを
想像していただければおわかりだと思うのだが
頭から浴びたときヒトはその水音の流れる音に吸い込まれてしまう
頭を洗いながら会話をするのは案外に難しいものだ
銭湯などで経験あるかたも多いのではなかろうか
そしてこの家の場合単にシャワーの流水音だけではない
私の実家のお風呂は
灯油をボイラーで焚いて湯を出す方式で
シャワーを使っている間
ごおぉんごん! どん!!ごおぉん!と
かなり激しい音がする
当然シャワーで洗髪をしているときには
浴室のドアを開けて大声で声をかけられても
水音とそのボイラーの音で殆ど気がつかないのが常だったのだ
まあ 気のせいだろう
私は気持ちを再びそらそうとした
するとまたも
『わ○△○あ○△○ね』
明らかに声がして
私はとっさに振り向いた
浴室の擦りガラスの向こうで
もしかして母が声をかけているのではないか?
しばらくじっと見つめていても
ガラスの向こうで動くものの気配はまるでない
いったい なんなのか
少々不審に思い始める
明らかに 人の声だった
いや 「人のように聞こえる声」だった
気のせいなのだろうか・・・?
気のせい・・・なのだろう
風邪を引いてしまう 早く洗おう
再びシャワーに頭を突っ込む
するとまた
「わたし○△○△○○よ!」
もう気のせいではなかった
誰かに話し掛けられている
しかも今度は 繰り返し2度3度と同じ言葉を言っている
けれど どれだけ振り返っても見回しても
浴室には私はひとりっきりだった
何が言いたいのだろうと 私は少々いらだちだした
その声は人の声に似ていたけれど
発する言葉がもやもやしていて
最初と最後の部分しか明瞭に聞き取れない
一体 なんなの!寒いのよ!
言いたいことがあるんならはっきり言って頂戴!
いらだった私は
またまたシャワーに頭を突っ込み独りごちた
すると今度は明瞭な声でこう話し掛けられたのだ
『わたしあ○○ちゃんよ よろしくね』
あ・・・?
『私は 吾が子』
は?
『わたし赤ちゃんよ よろしくね』
・・・・は???
赤ちゃん?なに?
私は意味が分からなかった
--------------------続く