天公の前に立った私は必死で自分を抑えていた
それは神威だった
神威(しんい)とは神が持つ霊波のようなもので
神圧とでも言えば良いのだろうか
うまく説明できないのだが・・・
それが神威というのが正しいのかもわからない
この霊波自体には何の意思も何もなく
海が波を生むように
神から湧き出る波のようなものなのだ
そしてそれは神がただ「在る」だけで
生まれ出でるものなのだ
であるからこの波動自体はエネルギー波と
思っていただいてもいいのかもしれない
またそれは本体自身の持つ波長とは
微妙に違っていたりすることもある
かつて岐阜県の高賀神社を訪れた際感知したのが始まりで
私は単純にいつも「神様の波動」と呼んでいた
しかし高賀神社の場合は龍の波動だと思っていたし
私以外誰もそれを感じてはおらず
みなポカンとしていたのを覚えている
私も「私だけが分かるのよ」的なものは
とても恥ずかしいし嫌悪するタイプなので
この「神様の波動」を感じても
殆ど話したことはなかった
それが天公の前に立った私へ
『しんい(神威)』
と これが「神威」というものなのだと何かが告げたのだ
神威 神威だ
何も疑うことはなかった
私が勧請したわけではない
まだ タンキーが勧請したわけでもない
けれど これを神威だというのだと
なぜか私は少しも疑問を抱かなかったのだ
今これをこうして書いていても
やはり恥ずかしくてかなりためらいを感じる
でも 恥ずかしがるのをやめることにしたのだから
頭がおかしいと思われても書きすすめよう
私にそれを告げた「何か」
それは私の預かり知らぬ「神」であった
今までアクセスしたことのない間違いない「神」であった
私の斜め上方に
肉の目には映らぬ白金色の光が現れていた
そして天公の持つ強い強い神威が
私の中の「私」を激しく鳴動させ
肉体をも揺り動かそうとしていたのだった
私は必死だった
ここは台湾の廟すなわち他人様の土俵である
ここにはきちんとタンキーがおいでになるのだ
私などが勝手に神威を戴いて
神懸かってはならないのだ
けれどそう思う私の意思など無視して
手は動き宙に舞いだそうとする
渾身の力で押さえつける脚も
何かに操られるかのように踊りだそうとする
あの暖かで巨大な光を受けて
既に両の目は神が降りるときそのままに
半眼以上には開かなくなっていた
私の斜め後ろでは
拝拝を終えたSさんが
進められるまま椅子に腰掛け
白湯を渡されているのが「見えた」
人々はみな 和やかに談笑し
その声が様子があまりに日常的すぎて
今この瞬間私に起こっていることを
誰も気がついていないということに
安心と不安の思いがぐるぐる交差した
今味わっているこれは妄想ではないのか
神威ならタンキーの人だって
何かいってくるんじゃないのか
いや ばれないように
全精力つかっているのだからあたりまえだ
でもまるで まるで
よその家族団欒の声が聞こえてきたあの部屋で
旦那に酒瓶で殴られていたあの時みたいだ
私だけが 私だけが
世界からはみ出しているみたいだ
外から見たら普通に見えるように
そればかりを気にして必死になっているけれど
内実はそれどころではなかった
夜更けの台北は風が吹けばそこそこ寒くなる
中にはファーのついたコートを着ている人もいた
拝み続ける私の身体は肉の包み紙でしかなくなっており
中身はぐらぐらと激しく沸騰していた
まるで沸かした湯のように
私の身体の中身がごぼごぼと沸騰し
目には見えぬ何かの流れが
奔流となり対流を起こしていた
その発する蒸気が頭の登頂から天へと
蒸気機関車の煙のようにごおごおと抜けていく代わりに
背中の背筋に沿うようにして
とろとろと金色の暖かな何かが流れ込み
どろりと胸で金色の輪を描いて回していた
やがて燃えるように暑くなり
特に顔 とくに額の中心は
火を噴いているかのように暑く
私は額からだらだらと汗が流れ落ちてくるのを感じていた
これ以上は もう限界
もう 「自分」を保てない
限界の力を振り絞り
祭壇の前より身体を無理やり引き剥がし
私はSさんの横の椅子へ座り込んだ
神懸からないよう拒絶するのが
こんなにつらいなんて・・・
座り込んだ私にお婆さんが
白湯と大きなみかんを手渡すと
にっこりと微笑んだ
手のしぐさで 食べなさいと
そう言ってくれているのだと分かる
「ありがとう 謝謝」
本当は欲しくないのだが
その気遣いが申し訳なくて
飲みたくもない白湯を一口飲んだ
私の接続はまだ切れてはいない
ずいぶんおさまって来ているとはいえ
肌感覚が通常とはまったく異なっており
まだ自分が日常に帰っていないと
自分で分かっていたのだ
「ハヌルさん ねえ タンキーの人 ゲップしてる・・」
Sさんに言われるまでもなく
私も気がついていた
私が神威を感じはじめた瞬間から
タンキーは歩きながら大きなゲップをし始めていた
「Kさんみたいだね・・」
SさんのいうKさんもやはり
霊や神など
目に見えぬものを無意識で感知すると
激しくゲップをしたりあくびをしていたのだ
本人はいつも何もわからないというのだけれど・・
私たちはタンキーの激しくなるゲップを聞きながら
やはり という思いを強くしていた
祭壇の周りをうろうろしながら歩き回るタンキーの目は
先ほどとはまるで違い
あまりにも眼光は鋭く表情も険しい
いよいよだ
いよいよタンキーの神降ろしが始まるのだ
++++++++++(タンキーのお告げ編に続く)
それは神威だった
神威(しんい)とは神が持つ霊波のようなもので
神圧とでも言えば良いのだろうか
うまく説明できないのだが・・・
それが神威というのが正しいのかもわからない
この霊波自体には何の意思も何もなく
海が波を生むように
神から湧き出る波のようなものなのだ
そしてそれは神がただ「在る」だけで
生まれ出でるものなのだ
であるからこの波動自体はエネルギー波と
思っていただいてもいいのかもしれない
またそれは本体自身の持つ波長とは
微妙に違っていたりすることもある
かつて岐阜県の高賀神社を訪れた際感知したのが始まりで
私は単純にいつも「神様の波動」と呼んでいた
しかし高賀神社の場合は龍の波動だと思っていたし
私以外誰もそれを感じてはおらず
みなポカンとしていたのを覚えている
私も「私だけが分かるのよ」的なものは
とても恥ずかしいし嫌悪するタイプなので
この「神様の波動」を感じても
殆ど話したことはなかった
それが天公の前に立った私へ
『しんい(神威)』
と これが「神威」というものなのだと何かが告げたのだ
神威 神威だ
何も疑うことはなかった
私が勧請したわけではない
まだ タンキーが勧請したわけでもない
けれど これを神威だというのだと
なぜか私は少しも疑問を抱かなかったのだ
今これをこうして書いていても
やはり恥ずかしくてかなりためらいを感じる
でも 恥ずかしがるのをやめることにしたのだから
頭がおかしいと思われても書きすすめよう
私にそれを告げた「何か」
それは私の預かり知らぬ「神」であった
今までアクセスしたことのない間違いない「神」であった
私の斜め上方に
肉の目には映らぬ白金色の光が現れていた
そして天公の持つ強い強い神威が
私の中の「私」を激しく鳴動させ
肉体をも揺り動かそうとしていたのだった
私は必死だった
ここは台湾の廟すなわち他人様の土俵である
ここにはきちんとタンキーがおいでになるのだ
私などが勝手に神威を戴いて
神懸かってはならないのだ
けれどそう思う私の意思など無視して
手は動き宙に舞いだそうとする
渾身の力で押さえつける脚も
何かに操られるかのように踊りだそうとする
あの暖かで巨大な光を受けて
既に両の目は神が降りるときそのままに
半眼以上には開かなくなっていた
私の斜め後ろでは
拝拝を終えたSさんが
進められるまま椅子に腰掛け
白湯を渡されているのが「見えた」
人々はみな 和やかに談笑し
その声が様子があまりに日常的すぎて
今この瞬間私に起こっていることを
誰も気がついていないということに
安心と不安の思いがぐるぐる交差した
今味わっているこれは妄想ではないのか
神威ならタンキーの人だって
何かいってくるんじゃないのか
いや ばれないように
全精力つかっているのだからあたりまえだ
でもまるで まるで
よその家族団欒の声が聞こえてきたあの部屋で
旦那に酒瓶で殴られていたあの時みたいだ
私だけが 私だけが
世界からはみ出しているみたいだ
外から見たら普通に見えるように
そればかりを気にして必死になっているけれど
内実はそれどころではなかった
夜更けの台北は風が吹けばそこそこ寒くなる
中にはファーのついたコートを着ている人もいた
拝み続ける私の身体は肉の包み紙でしかなくなっており
中身はぐらぐらと激しく沸騰していた
まるで沸かした湯のように
私の身体の中身がごぼごぼと沸騰し
目には見えぬ何かの流れが
奔流となり対流を起こしていた
その発する蒸気が頭の登頂から天へと
蒸気機関車の煙のようにごおごおと抜けていく代わりに
背中の背筋に沿うようにして
とろとろと金色の暖かな何かが流れ込み
どろりと胸で金色の輪を描いて回していた
やがて燃えるように暑くなり
特に顔 とくに額の中心は
火を噴いているかのように暑く
私は額からだらだらと汗が流れ落ちてくるのを感じていた
これ以上は もう限界
もう 「自分」を保てない
限界の力を振り絞り
祭壇の前より身体を無理やり引き剥がし
私はSさんの横の椅子へ座り込んだ
神懸からないよう拒絶するのが
こんなにつらいなんて・・・
座り込んだ私にお婆さんが
白湯と大きなみかんを手渡すと
にっこりと微笑んだ
手のしぐさで 食べなさいと
そう言ってくれているのだと分かる
「ありがとう 謝謝」
本当は欲しくないのだが
その気遣いが申し訳なくて
飲みたくもない白湯を一口飲んだ
私の接続はまだ切れてはいない
ずいぶんおさまって来ているとはいえ
肌感覚が通常とはまったく異なっており
まだ自分が日常に帰っていないと
自分で分かっていたのだ
「ハヌルさん ねえ タンキーの人 ゲップしてる・・」
Sさんに言われるまでもなく
私も気がついていた
私が神威を感じはじめた瞬間から
タンキーは歩きながら大きなゲップをし始めていた
「Kさんみたいだね・・」
SさんのいうKさんもやはり
霊や神など
目に見えぬものを無意識で感知すると
激しくゲップをしたりあくびをしていたのだ
本人はいつも何もわからないというのだけれど・・
私たちはタンキーの激しくなるゲップを聞きながら
やはり という思いを強くしていた
祭壇の周りをうろうろしながら歩き回るタンキーの目は
先ほどとはまるで違い
あまりにも眼光は鋭く表情も険しい
いよいよだ
いよいよタンキーの神降ろしが始まるのだ
++++++++++(タンキーのお告げ編に続く)