今から思えば
小さいころから神経を病んでいた私は
目にするもの耳にするもの
全てが恐怖だった
物心つかないころから
私はしがみつくものを探して探して探して
気が狂うほどに求めて
毎日が強く強く張り詰めた弦のよう
いつも私には恐ろしいものが見え
恐ろしい物音が聞こえ
夜は眠れず
やっと眠った夢の中でも
私を追いかける黒い影に怯え
ちぎれた死体に囲まれ
蛇だらけの部屋に押し込められ
しかし声を奪われ叫ぶこともできず
一寸先も見えぬ灰色の霧の中をさまよい歩く
現実の肉体の方はといえば
家中を眠ったまま歩き回る夢遊病状態に陥っていた子供時代
成長するにつれ
壁も空も全てのものが
私を脅かすように思えた
死にたくはなかった
死にたくはなかった
ただ
完璧に気が狂って
病院へ強制入院されたいとそればかり思った
死ぬことは怖かった
でもまともではない頭を抱えて
すがるものも得ることもなく
足元にぽっかりと暗い穴があいていて
私は宙吊りになって生きていた
恐ろしいものが私を見つめている毎日から
逃げ出したかった
普通の人のふりをするために
さまざまな本を読んだ
本を読んでいるとき
絵を書くとき
文章を書いているとき
それが安息の時間だった
なにかが私を見ていると思わずにすむ時間だったから
眠れぬ私は育たず
食べることもあまりしなかった
体には骨が浮いて
皮膚は黒ずんでいた
病院へ行くようにと注意を受けた母は
当然のようにそれを無視した
私は暗いほうへ暗いほうへと自分を向けていく
近所の男に物心ついたころから
今でいう性的虐待を10年ほど受けていた
しかし誰にもいわなかった
そしてそれは幕開けにすぎなかった
強姦
暴行
売春
麻薬の強制
乱交の強制
背負わされる借金
盗難
監禁
幻覚
せん妄
妄想
逃避行
自殺未遂
これらのことがすべて起こった
それも何度も何度も果てなくリピートしていく
人はいれかわってもこれらは終りなく
繰り返されていく私の20代~30代
絶望したいと思いながら
絶望できない自分を呪った日々
夢を見ていたような気がする
とても長い長い夢
あの日突然美しい光が
私も世界を形作る音のひとつなんだと
教えてくれた
人が神と名づけた全ての向うに
「・」というものがあるのだと
私も人の名づけた神々も世界も何もかも
見えるものも見えないものも
その一部なのだと
この世は桃色の光に包まれ愛撫されて輝いていた
その光は私の頭の上からも
ハチミツを垂らすように全身に垂れてきて
見上げればまばゆい光の方から私へと
金粉が舞い落ちてきていた
私の体はどんどんと大きくなり
地球を腕に抱きしめひとつになった
やがて私の輪郭は揺らぎ溶けはじめる
そこには歓喜のみがあった
あまりに美しく
あまりに温かく
恐怖も
こだわりも
緊張も
何もなかった
この世の全てが
その細胞ひとつひとつ
分子のひとつひとつ
電子も陽子も歌を歌っていた
あらん限りの声でそれぞれの歌を
その歌はひとつになり
壮大な合唱曲となっていた
その中で私も私の歌を歌っていた
ハレルヤ
聖なるかな
聖なるかな
聖なるかな
そうして私は
「・」に溶けていった
喜びも
悲しみも
苦しみも
何もかもがひとつで
何もかもがあり
何もかもが無い場所
私は微笑みながら泣いていた
なにが起こったのか分かっていた
小さいころから神経を病んでいた私は
目にするもの耳にするもの
全てが恐怖だった
物心つかないころから
私はしがみつくものを探して探して探して
気が狂うほどに求めて
毎日が強く強く張り詰めた弦のよう
いつも私には恐ろしいものが見え
恐ろしい物音が聞こえ
夜は眠れず
やっと眠った夢の中でも
私を追いかける黒い影に怯え
ちぎれた死体に囲まれ
蛇だらけの部屋に押し込められ
しかし声を奪われ叫ぶこともできず
一寸先も見えぬ灰色の霧の中をさまよい歩く
現実の肉体の方はといえば
家中を眠ったまま歩き回る夢遊病状態に陥っていた子供時代
成長するにつれ
壁も空も全てのものが
私を脅かすように思えた
死にたくはなかった
死にたくはなかった
ただ
完璧に気が狂って
病院へ強制入院されたいとそればかり思った
死ぬことは怖かった
でもまともではない頭を抱えて
すがるものも得ることもなく
足元にぽっかりと暗い穴があいていて
私は宙吊りになって生きていた
恐ろしいものが私を見つめている毎日から
逃げ出したかった
普通の人のふりをするために
さまざまな本を読んだ
本を読んでいるとき
絵を書くとき
文章を書いているとき
それが安息の時間だった
なにかが私を見ていると思わずにすむ時間だったから
眠れぬ私は育たず
食べることもあまりしなかった
体には骨が浮いて
皮膚は黒ずんでいた
病院へ行くようにと注意を受けた母は
当然のようにそれを無視した
私は暗いほうへ暗いほうへと自分を向けていく
近所の男に物心ついたころから
今でいう性的虐待を10年ほど受けていた
しかし誰にもいわなかった
そしてそれは幕開けにすぎなかった
強姦
暴行
売春
麻薬の強制
乱交の強制
背負わされる借金
盗難
監禁
幻覚
せん妄
妄想
逃避行
自殺未遂
これらのことがすべて起こった
それも何度も何度も果てなくリピートしていく
人はいれかわってもこれらは終りなく
繰り返されていく私の20代~30代
絶望したいと思いながら
絶望できない自分を呪った日々
夢を見ていたような気がする
とても長い長い夢
あの日突然美しい光が
私も世界を形作る音のひとつなんだと
教えてくれた
人が神と名づけた全ての向うに
「・」というものがあるのだと
私も人の名づけた神々も世界も何もかも
見えるものも見えないものも
その一部なのだと
この世は桃色の光に包まれ愛撫されて輝いていた
その光は私の頭の上からも
ハチミツを垂らすように全身に垂れてきて
見上げればまばゆい光の方から私へと
金粉が舞い落ちてきていた
私の体はどんどんと大きくなり
地球を腕に抱きしめひとつになった
やがて私の輪郭は揺らぎ溶けはじめる
そこには歓喜のみがあった
あまりに美しく
あまりに温かく
恐怖も
こだわりも
緊張も
何もなかった
この世の全てが
その細胞ひとつひとつ
分子のひとつひとつ
電子も陽子も歌を歌っていた
あらん限りの声でそれぞれの歌を
その歌はひとつになり
壮大な合唱曲となっていた
その中で私も私の歌を歌っていた
ハレルヤ
聖なるかな
聖なるかな
聖なるかな
そうして私は
「・」に溶けていった
喜びも
悲しみも
苦しみも
何もかもがひとつで
何もかもがあり
何もかもが無い場所
私は微笑みながら泣いていた
なにが起こったのか分かっていた