いよいよ時は訪れた
中国動乱の中を生き残ってきた台湾のタンキー
本の中でしか知らなかったその祭祀を
私は今この目にするのである
それはどんな有り様なのか
その時私は何を感じるのか
ただ傍観者として
そこにその他大勢としてあるだけなのか
それとも・・・
いや 本当はそんなことはどうでも良かった
とにもかくにも
私は霊能力者や霊媒師が
神懸かる現場に居合わせてみたかっただけなのだ

私は私以外が神と触れ合うその時を
今まで一度も見たことが無かった
やはり自分は本当は「違う」のではないか
自分以外の神懸かる様を見たのなら
是か否かわかるのではないだろうかと
いつか考えるようになっていた
怯えながらも卑しい私は
神懸かった第三者による激しい叱責を
そして「断罪」を受けるのを
心の奥底で期待していた

お前はただの精神病だ

その運命の一言を待っていた


タンキーである邸氏は
どんどんと激しくなっていく
ゲップをげえげえと繰り返しながら
廟の中を行ったり来たりとうろつきまわる
やがて目を閉じると 
唐突に祭壇の前に据えられた
小さな薄い座布団に腰をおろした
そしてそのまま胡座をかき
胸の前で手を合わせ
口の中で何かをもごもごと唱え始める

廟の空気は一変していた

先ほどまでの家庭的な
まるで親戚の集まりとでもいった穏やかな雰囲気だった廟が
今では集まったもの皆が一心に邸氏を見つめ
そして神を迎えるそのときが近づくのを待っている
怖いほど張り詰めたそしてどことなく興奮したような
そんな奇妙な空気が場を満たしていた
入り口付近では誰かが小声で何かをささやく声が聞こえる
けれど異国人の私には台湾語のささやきなど
この異様な光景にぴったりなBGMのようにしか感じていなかった

邸氏のゲップはさらに酷くなっていく
目を閉じ何かをつぶやきつづける彼の身体は
ゆらゆらと前後左右と揺らめき
初めは小さかったその動きは
やがて座ったまま倒れこむのではないかと思うほど
大きく大きく揺れ動き始めた

ふと入り口を振りかえると
人垣の隙間から通行人の姿が見えた
通り過ぎていく人々はみな若く
ミニスカートにブーツといった
いまどきの服装をした若者たちで
一瞬目を留めはするものの
関心も示さずに通り過ぎていく
それが私には驚きだった
ほんの1メートル内側では
今まさに神が降臨しようとしている
けれどそこを若いカップル達が腕を絡ませ通り過ぎていく

あぁ これが 聖と俗の本質なのだ

先ほど神懸かるのを見破られまいとした私の苦悩の答えを
目に見える形で教えられた気がした

聖と俗 その両義性か・・

ここにも日常と非日常がぱっくりと顔を現していた

やがて邸氏は
大声で何かを叫び始めた
それは台湾語のわからぬ私には
一切聞き取れぬ言葉であった
しかし何故か私には邸氏が
何を話しているのか分かる気がした
いや もちろんその言葉は
音としては聞き取れは
台湾語に似てはいるが
これは台湾語ではないと思った
そうこれはおそらく「異言」なのだ

異言というのも
本当はなんと言うのかは分らないのだが
私が神仏とつながるとき
自然と口から話す言葉であり
それは日本語に似ているけれど日本語でなく
韓国語に似ているけれどもそうでなく
けれど単語の部分はそのままのものもあり
しかし総合的には何語ともいえぬ言葉なのだ
何語とも言えぬので私は
「普通の言葉と異なる言葉」の略で
「異言」と呼んでいる

しかし何故このときそう思ったのかわからない
けれど私はなんの疑問も無く
なぜかそう思ったのだった
タンキーが今発しているこの言葉は
決して台湾の人にも聞き取れぬと

激しく身体を揺らせながら
時に叫び 時につぶやく 今
この地に そして邸氏に
神が近づいていた
そして次の瞬間
あっと思うや邸氏は
なんと胡座をかいたまま
祭壇の上に飛び乗っていたのである
そして悶絶するように背中を反らしたかと思うと

ぎょぇえぇぇええ

一際大きな叫び声を放った

その祭壇は身長163センチである私の
ウエストほどの高さの大きなものであり
いくら何でも
せめて助走しないと飛び乗るのは難しい

・・・麻原○晃か?

瞬間私の頭をそんな言葉がよぎる
しかし 今この瞬間
彼は神と合一していたのであった

**************(タンキー編8へ続く)

熱で頭がぼけていたため
相当適当な文章でアップしていたことに気が付きました 汗
さっき見直したらあまりにひどく 
我ながら驚きました
既にアップした後なので
最低限の改定を施しておくに留めますが・・・
意味がわからないにもほどがある文章で
本当にすみません・・・