(ひとつ前の話の後日談です)
さて占い師と出会った次の日の
夜のことである
私とクライアントのTさんは
某ホテルのレストランでディナーをしていた
あらかじめのセッションにて
このホテルがTさんにとって
とても重要な意味をもつ場所だということが分かっており
ここに彼女を連れてくることが
旅の目的のひとつにもなっていた
しかし予定では昼間の間に訪れるはずが
諸事情でずれ込んでしまい
気がつけば夜になってしまったので
仕方なくホテルの中のレストランで
食事をすることにしたのだった
仕方なくとはいえ
夜景の眺められる有名高級レストランである
そんな場所に
ツアーでつれて来られたわけでなく
自分たちでふらりと食べに来るというシチュエーションは
本来の目的を忘れさせるほど
私の心を浮き立たせてくれた
そんなことでわくわくと喜べるほど
普段の私の生活はつつましやかなのである
ひとときセレブ気分を味わい
私たちはレストランを後にし
ホテル内のショッピングモールを
冷やかすことにした
何軒か見て歩いていると
伝統的な招福の飾り物を置いている一軒のお店で
Tさんが交渉し始めた
私はこれといって買う気もないので
その間ぶらぶらと周りをふらつくことにした
しばらくうろちょろしていると
斜め前の店のおばさんが
こっそり隠れるようにして
私を手招きしているのが見える
どの店も似たり寄ったりの品揃えで
来た客を奪い合って商売をしているらしかった
あぁ 客引きだなとピンときつつも
暇をもてあましていたので
私は彼女の招きに応じることにした
近くに寄った途端すかさず彼女は
「アチラの店より安くするから こっそり友達連れてらっしゃい」
小さく早口で私にささやきかけた
案の定なのでかえってなんだか微笑ましくて
私はTさんを彼女の店へ呼んであげることにした
なんにせよ あるものは差が無いので
安くしてくれればそれだけ
Tさんが得するだけなのだから
しばらくあーだこーだと言い合った挙句
Tさんはこの店で
かなりの量のお土産を買うことに決めた
Tさんもあれこれ無駄話をしているうちに
このおばさんの雰囲気が
なんとなく気に入ったのかもしれなかった
するとおばさんは
素敵な台湾民芸調の箱を取り出し
これはサービスねと微笑んで
邪魔にならなければこれに入れてあげますと
上手な日本語で話しかけてくれた
すっかり打ち解けあった私たちに
商売上手な土産もの屋のオーナーは
その名を黄だと名乗り
あなたたち仕事は何をしているのかと尋ねた
まっすぐに私を見る黄さんの目に
私は一瞬ぐっと答えにつまってしまった
こんな海外まで「仕事」として来ていたにも関わらず
どうにもやはり私は
自分の「仕事」を職業として語るには
気恥ずかしさばかりが先にたち
いたたまれない思いをしてしまうのだ
「占い師?です 彼女は」
Tさんが答えたその言葉の意味を
黄さんは良く分からないようで
うーんと首をひねっている
私は 覚悟を決めた
「私は日本のタンキーです」
「タンキー?」
黄さんはそれでもうまくわからないようだった
そこで私は手帳を取り出すと
それだけ覚えてきた台湾語の漢字で
タンキーと記してみた
すると黄さんはしばらくぼーっと眺めていたが
突然はっとした顔で
「チートン! チートンね! あなたチートンですか!?」
と 勢いづいて大きな声を出したのだ
「チートン? あ タンキー・・キータン?
キータンというのですか?こういうひとのことです」
私は更にノートに
霊能力 霊視 と書き連ねてみる
「おお! そうです 霊能です!!
台湾ではチートンいいます!
え!? あなたそうなのですか?!」
驚く彼女に
私はかなり恥ずかしく思いながら
私は日本でタンキーをしていること
台湾のタンキーに会いにきたこと
会う手立てが無くて
どうしていいのか分からないことを
簡単に説明をした
実際はタンキーに会いに来たというわけでもなく
もちろん本当は台北でのセッションと
クライアントの因縁断ちのために
日本を飛び立ってきたのが
本当の理由だ
けれどもなんとなく
本当になんとなく
そう口から出てしまった
それはきっと今思えば
自分の中の密かな期待が
そうさせてしまったんだろう
例えば誰かにイタコに会いたいといわれても
私にはどうしようもできないのに
いくら台湾に来たからといって
いくら台湾人だからといって
闇雲にタンキーに会いたいと言ってまわって
会えるはずもないのが本当だと思っていた
だからといって
黄さんに全てを説明するには
時間がかかりすぎるし
彼女がどの程度日本語が分かるのかも分からないし
なによりただの雑談で
あら そうなのと
あっさり終わるであろうと思っていたのだ
「会えますよ!私チートンよく知っています!」
驚いた
なんということだ
黄さんの言葉に耳を疑った
「私が会わせてあげますよ!
私よくチートンに会ったことあります
私が会えるか調べてあげますから
ちょっと待って 電話今します」
目の前で電話をし始めた黄さんの声を聞きながら
私はあまりの展開に驚き
Tさんと二人 ただただ
凄い 凄いと 言いあった
まさか そんな
こんなことになるなんて
本当にタンキーに会えるかもしれないなんて
ふと私は自分が漫画か小説か
何かの登場人物にでもなったのではないか
そんな妙な考えまで浮かんでしまう
「残念です
私の知ってるチートン忙しいです
会えません」
電話を終えた黄さんは
残念そうにそう私に告げた
しかし彼女はこう続けてくれた
「私のお姉さん他のチートン知ってますから
聞いてもらいます
そして私明日休みなんです
明日会えるだったら私一緒に行ってあげます
チートン 台湾語しか話せません
私通訳してあげますよ
だから私からの電話待っててください
必ず電話しますから!」
2時間後私は
黄さんからの電話を受けた
「ハヌルさん!大丈夫です!
明日 台湾の神様の特別の日でした!
だから会えるですよ! チートン会えるです!」
こうして次の日の夜
私とTさんはタンキーがいるという
とある廟へと行くことになったのである
+++++++++(タンキー編まだまだ続く)
さて占い師と出会った次の日の
夜のことである
私とクライアントのTさんは
某ホテルのレストランでディナーをしていた
あらかじめのセッションにて
このホテルがTさんにとって
とても重要な意味をもつ場所だということが分かっており
ここに彼女を連れてくることが
旅の目的のひとつにもなっていた
しかし予定では昼間の間に訪れるはずが
諸事情でずれ込んでしまい
気がつけば夜になってしまったので
仕方なくホテルの中のレストランで
食事をすることにしたのだった
仕方なくとはいえ
夜景の眺められる有名高級レストランである
そんな場所に
ツアーでつれて来られたわけでなく
自分たちでふらりと食べに来るというシチュエーションは
本来の目的を忘れさせるほど
私の心を浮き立たせてくれた
そんなことでわくわくと喜べるほど
普段の私の生活はつつましやかなのである
ひとときセレブ気分を味わい
私たちはレストランを後にし
ホテル内のショッピングモールを
冷やかすことにした
何軒か見て歩いていると
伝統的な招福の飾り物を置いている一軒のお店で
Tさんが交渉し始めた
私はこれといって買う気もないので
その間ぶらぶらと周りをふらつくことにした
しばらくうろちょろしていると
斜め前の店のおばさんが
こっそり隠れるようにして
私を手招きしているのが見える
どの店も似たり寄ったりの品揃えで
来た客を奪い合って商売をしているらしかった
あぁ 客引きだなとピンときつつも
暇をもてあましていたので
私は彼女の招きに応じることにした
近くに寄った途端すかさず彼女は
「アチラの店より安くするから こっそり友達連れてらっしゃい」
小さく早口で私にささやきかけた
案の定なのでかえってなんだか微笑ましくて
私はTさんを彼女の店へ呼んであげることにした
なんにせよ あるものは差が無いので
安くしてくれればそれだけ
Tさんが得するだけなのだから
しばらくあーだこーだと言い合った挙句
Tさんはこの店で
かなりの量のお土産を買うことに決めた
Tさんもあれこれ無駄話をしているうちに
このおばさんの雰囲気が
なんとなく気に入ったのかもしれなかった
するとおばさんは
素敵な台湾民芸調の箱を取り出し
これはサービスねと微笑んで
邪魔にならなければこれに入れてあげますと
上手な日本語で話しかけてくれた
すっかり打ち解けあった私たちに
商売上手な土産もの屋のオーナーは
その名を黄だと名乗り
あなたたち仕事は何をしているのかと尋ねた
まっすぐに私を見る黄さんの目に
私は一瞬ぐっと答えにつまってしまった
こんな海外まで「仕事」として来ていたにも関わらず
どうにもやはり私は
自分の「仕事」を職業として語るには
気恥ずかしさばかりが先にたち
いたたまれない思いをしてしまうのだ
「占い師?です 彼女は」
Tさんが答えたその言葉の意味を
黄さんは良く分からないようで
うーんと首をひねっている
私は 覚悟を決めた
「私は日本のタンキーです」
「タンキー?」
黄さんはそれでもうまくわからないようだった
そこで私は手帳を取り出すと
それだけ覚えてきた台湾語の漢字で
タンキーと記してみた
すると黄さんはしばらくぼーっと眺めていたが
突然はっとした顔で
「チートン! チートンね! あなたチートンですか!?」
と 勢いづいて大きな声を出したのだ
「チートン? あ タンキー・・キータン?
キータンというのですか?こういうひとのことです」
私は更にノートに
霊能力 霊視 と書き連ねてみる
「おお! そうです 霊能です!!
台湾ではチートンいいます!
え!? あなたそうなのですか?!」
驚く彼女に
私はかなり恥ずかしく思いながら
私は日本でタンキーをしていること
台湾のタンキーに会いにきたこと
会う手立てが無くて
どうしていいのか分からないことを
簡単に説明をした
実際はタンキーに会いに来たというわけでもなく
もちろん本当は台北でのセッションと
クライアントの因縁断ちのために
日本を飛び立ってきたのが
本当の理由だ
けれどもなんとなく
本当になんとなく
そう口から出てしまった
それはきっと今思えば
自分の中の密かな期待が
そうさせてしまったんだろう
例えば誰かにイタコに会いたいといわれても
私にはどうしようもできないのに
いくら台湾に来たからといって
いくら台湾人だからといって
闇雲にタンキーに会いたいと言ってまわって
会えるはずもないのが本当だと思っていた
だからといって
黄さんに全てを説明するには
時間がかかりすぎるし
彼女がどの程度日本語が分かるのかも分からないし
なによりただの雑談で
あら そうなのと
あっさり終わるであろうと思っていたのだ
「会えますよ!私チートンよく知っています!」
驚いた
なんということだ
黄さんの言葉に耳を疑った
「私が会わせてあげますよ!
私よくチートンに会ったことあります
私が会えるか調べてあげますから
ちょっと待って 電話今します」
目の前で電話をし始めた黄さんの声を聞きながら
私はあまりの展開に驚き
Tさんと二人 ただただ
凄い 凄いと 言いあった
まさか そんな
こんなことになるなんて
本当にタンキーに会えるかもしれないなんて
ふと私は自分が漫画か小説か
何かの登場人物にでもなったのではないか
そんな妙な考えまで浮かんでしまう
「残念です
私の知ってるチートン忙しいです
会えません」
電話を終えた黄さんは
残念そうにそう私に告げた
しかし彼女はこう続けてくれた
「私のお姉さん他のチートン知ってますから
聞いてもらいます
そして私明日休みなんです
明日会えるだったら私一緒に行ってあげます
チートン 台湾語しか話せません
私通訳してあげますよ
だから私からの電話待っててください
必ず電話しますから!」
2時間後私は
黄さんからの電話を受けた
「ハヌルさん!大丈夫です!
明日 台湾の神様の特別の日でした!
だから会えるですよ! チートン会えるです!」
こうして次の日の夜
私とTさんはタンキーがいるという
とある廟へと行くことになったのである
+++++++++(タンキー編まだまだ続く)