川上優太は店内を見渡していた。
すぐに見覚えのある顔を見つけた。髪の長い女性だ。
その瞬間、彼女も川上優太に気づく、幸子は椅子から立ち上がり遠くからお辞儀をしている
2年ぶりの再会だった。
幸子 『優太さん、連絡遅くなって本当にごめんなさい』
優太 「いいよ もう 連絡が取れただけで嬉しいよ」
幸子 『すみません・・』
優太 「お姉さん大変だったね」
幸子 『はい・・』
優太 「幸子さんは元気になったのかい?」
幸子 『はい、一時期は落ち込んでいたけれど今は元気です』
優太 「そっか、俺の方が元気ないかもね」
幸子 『どうしてですか?』
優太 「そりゃそうだよ ひなたが亡くなったって聞いたの3日前だよ」
幸子 『そうですよね』
優太 「いつ亡くなったの?」
幸子 『2年前です・・コミュ二ティサイト閉鎖のすぐ後です』
優太 「そうか、ひなたと一度逢いたかったな」
幸子 『そうですか そんなに思っていて頂いたなんて嬉しいです』
優太 「もうちょっと早く連絡欲しかったけどね」
幸子 『ごめんなさい・・』
優太 「ぜんぜん知らなかった。二年前のメールでは元気だったからさ」
幸子 『はい 姉は明るく振舞っていましたから』
優太 「結局、ひなたのメールは全部作り話しだったんだよね?
演劇部の活動も、バレンタインも、運転免許の取得の話も?」
幸子 『そうです・・』
優太 「高校生でもなかったんだよね?」
幸子 『はい、あの頃の姉は二十歳でした』
優太 「幸子さん、あの時のメールは残っていると、言っていたよね?」
幸子 『はい』
優太 「持ってきているの?是非、読みたい」
斉藤幸子は、黙り込んでしまった。
スプーンで紅茶をかき混ぜながら、何かを考えている。
優太のアイスコーヒーが「カラン」と音を立てた
それをきっかけに、幸子から話しかけてきた・・・
幸子 『優太さん、私のこと幸子でいいですよ!』
優太 「あっうん わかった」
幸子 『優太さん、広島のスケートリンクでお会いした時はごめんなさい』
優太 「でも何であのスケートリンクに幸子が来たの?」
幸子 『私が行く様に頼まれたのです。姉には沢山報告をしましたよ。
スケートリンクで優太さんが優しかったこと、さかなぎ公園の展望台に連れて行ってくれたこと』
優太 「ひなたは何て?」
幸子 『本当は自分が行きたかったって・・』