高輪ゲートウェイへようこそ | マーケティング・コンサルタント弓削徹

高輪ゲートウェイへようこそ

山手線新駅の名称が「高輪ゲートウェイ」に決定しました。

 

ネーミングは私の専門分野。メディアからの取材問い合わせの準備で考えたことを書きます。

 

まず、なぜ唐突に「ゲートウェイ」が出てきたか。

 

これは、2016年から続く再開発プロジェクト「グローバルゲートウェイ品川」の中核施設だからこその想起です。

 

加えて、近隣には「品川インターシティ」や「大崎ニューシティ」などの商業施設ネーミングもあり、決定権を持つ人たちに「カタカナもありではないか」と考えさせる素地ができていました。

 

ですので、あえてこのネーミングを弁護すると次のようになります。

 

・時間がたてば慣れてしまう

・保守的な決定は責められがち

・所詮、一私企業の決定事項

 

仮に「高輪」と命名していたら、これほどメディアで取り上げられることもなかったでしょう。

そうです、炎上商法(笑)。ウソ

 

そもそも、駅名とは地名に準ずるもので意味はなくてもいい。

 

そのため、今回のネーミングの瑕疵は次の1点となります。

 

・長すぎる

 

名古屋に行くと、「名古屋駅」すら長いため、地元の人は「メイエキ」と省略(?)しています。

 

今後、「高輪ゲートウェイ」が省略されて「タカゲー」なんて呼ばれるようになったら、関係者は悲しむでしょう。

 

「ももクロ」と呼ぶような、愛が感じられないからです。

 

 

ちなみに台湾では「高輪入口」と翻訳しようとしているようですが。

 

今回のネーミングへの肯定意見は3%に過ぎず、「毀誉褒貶」「好き嫌い」のレベルではありません。

 

では、「もののふ」のように愛されたり、敬意を持ってもらうにはどうすればよかったか。

 

以前、私があるチェーン施設にネーミングしたとき、江戸古地図の旧町名に基づく名称を考えたことがあります。

 

駅名も同様です。

 

地域の歴史的価値を喚起するような名称であったら、地域住民の理解が得られ、この土地への興味も広がり、誰も異を唱えることのない駅名が誕生したはずです。

 

ネーミングライツを活用する方向性も考えられますが、東京駅に次ぐハブに育てていくなら避けるべきでしょう。

 

また、「高輪」単独や「泉岳寺」とつけづらいのには大人の事情があります。

 

 

選考会の思惑(想像)

 

「「泉岳寺」にしたら泉岳寺から訴訟を起こされるらしいよ」

「やっぱりさ、プロジェクト名でインパクトを与えたいなぁ」

「それな。できりゃ「ゲートウェイ駅」にしたい」

「地元商店街は「高輪」にしてくれと陳情してくるし」

「しょーがない、くっつけよう!」

「「損保ジャパン日本興亜」みたいな!?」

「長いから、結局、ゲートウェイって呼ばれるんじゃね?」

「そだねー♪」

 

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

 

ですから、結論を言えば、「芝浜」か「芝浦」でよかったのです。

 

この名称なら、「品川」と肩を並べられ、「田町」「大崎」に勝つこともできたのです。

 

「芝浜」と命名するなら、オープニングイベントには落語家を招いて「芝浜」を一席やってもらう。

 

一番いいのはこの大ネタを得意とした古今亭志ん朝師匠にきてもらうことですが、すでに鬼籍にあってお越しいただけない。

けれど、駅の発車メロディには「老い松」をかけたらいいですよね。

 

東京都民には新しくて懐かしい駅。世界にはジャパネスクな新駅。

 

いくらでも発想を広げられる重しとなる土台。

 

それが、今回のネーミング開発に必要な視点でした。

 

❇︎「老い松」は古今亭志ん朝師匠の出囃子