ものづくりのルーツ、刀剣
「弓を削る── 」
先祖はものづくりをしていた弓削です、武器ではありますが。
日本における刃物の名産地は新潟県燕市、岐阜県関市などがあげられます。
新潟・佐渡で講演をしたときは、「海外からの注文をさばききれない」という刀鍛冶の方にお話を聞きました。
また、燕市でいまは鋭利な爪切りを生産している諏訪田製作所にお邪魔して工場見学をさせていただきました。
諏訪田さんの工場の第一印象は「黒」です。
工場の外も内もすべて黒。
展示会で諏訪田製作所さんのブースを見かけることがあれば、ブースも黒いことに気がつくでしょう。
統一されたブランディングなのですが、ではなぜ黒なのか。
もともと諏訪田さんは鍛冶屋から発祥しています。
火の熱量を知り、火花の行方を把握するために、鍛冶の作業場は真っ黒に塗られていたとのこと。
そのルーツが、いまのブランディングに通じているわけです。
あの本田宗一郎さんの祖父は刀鍛冶であって、本田さんは生涯、鍛冶のことを語って飽きることがなかったといいます。
日本の刀鍛冶の製造技術は平安から鎌倉時代には確立していたようです。
そして、刀に対する信仰、文化的価値を見出していたともいわれます。
同時期に、朝鮮などでは刀工の名前一つ残っていないのに対し、日本では何百という優秀な刀工の名前が記録されているのです。
室町時代に下ると、刀剣は中国へと輸出される重要な産物となっていきます。
つまり、当時の先進国であった中国よりも高品質な刀を生産することができるようになっていたということなのです。
歴史研究で知られる磯田道史氏は、これを「日本が世界最高の技術水準に達した最初のアイテム」と表現しています。
すなわち、世界最高品質へと磨かれた刀剣の道は、ものづくり立国・日本へと続く歴史街道であったわけです。
いまも、テレビのバラエティ番組では「日本刀VSライフル銃」のような対決企画もありますね。
日本刀に対して芸術品としての価値を見出す傾向は、以前にもまして強まっているのかもしれません。
いわば、鑑賞に供するための美術刀剣── 。
現代はこれを愛する女性も増えているのだそうです。