なぜ妖怪ウォッチはヒットしたのか
妖怪ウォッチが大ヒットし、あまり関係のない人も知るところとなりました。
こうしたキャラクタービジネスは、なかなかヒットの計算ができません。
ふなっしーが超人気になるなんて、誰も予想できなかったように。
とにかく数を撃って、当たったキャラクターで不発アイテムのコストを回収する…というビジネスモデルとなりがちです。
ところが、妖怪ウォッチはちょっと事情がことなります。
つまり、計算ずくでのヒットだった、ということです。
このコンテンツビジネスはバンダイとレベルファイブとの共闘ですが、過去の人気キャラクター、アニメ、グッズのヒットした要因がこれでもかと引用されているのです。
つまり、ヒット要因の積み重ねによる、仕掛け通りのヒットというわけです。
私もがっつり視聴しているわけではありませんが、ちょっと分析してみましょう。
まず、定番グッズを売るために“妖怪ウォッチ”を主人公に持たせます。
時計スタイルにしたのは「たまごっち」と子供の関わり方をイメージしたのでしょうか。
そして、いろいろな妖怪キャラクターが敵味方とも無限に出てくる設定は「ゲゲゲの鬼太郎」を彷彿させます。
ポケモンではモンスターの案出に手間がかかりましたが、妖怪ならおなじみの古典キャラもいますし、人を生き霊として登場させることも可能。
ポケモンよりは相当にやりやすいはずです。
その妖怪の数だけ販売できるのが、ウォッチに装填できる妖怪メダル。
これはコレクションの対象になり、コンプリートを目標にする大人買いユーザーも巻き込みます。
ちなみに、メダルは妖怪を“召喚”することができるのですが、これはTBSのドラマ「スペック」からインスパイアされたのではないかと(主人公・当麻は、死んだ超能力者を召喚する超能力を持つ)。
そして、弱者への眼差しは「ポケモン」と共通しています。
ポケモンのゲームでは、弱いキャラクターも前座で短時間を戦うことでレベルが上がっていきます。
あとを引き受けて戦ってくれるのは別の強いモンスター。
弱くても戦える、助けてもらえる、という思いやりの構図がポケモンと似ているのです。
そして物語としては、友情・勇気を前面に出しており、「少年ジャンプ」の定番テーマと通底しています。
タイムトラベルや道具が出てくるところは「ドラえもん」。
主人公・景太のクラスメイトも、かわいいフミちゃん、ガキ大将のクマ、家が金持ちのカンチという、ドラえもんと相似形の世界。
だいたい、ドラえもんもネコです(ジバニャンの未来の姿としてロボニャンも出てくる)。
さらに、キャッチーで単純なサビメロを繰り返すテーマソングに、おぼえやすい振り付け。
幼稚園、学校などの行事でも採用され、“みんなが好き”な状況を作り出しました。
また、4月新学期のタイミング以前にアニメやグッズを前倒し展開させて購入のピークをつくるのは、「プリキュア」シリーズの常套手段を参考にしているでしょう。
“妖怪ウォッチ”も、いいところで「零式」をモデルチェンジさせています。
主人公が、相棒としてネコを連れ歩くアニメは数えきれませんが、本作もネコに“ジバニャン”というよい響きのネーミングを与え、ぬいぐるみの定番にしています。
ただ残念だったのが、“ウォッチ”の品薄状態が続き、転売業者などが倍以上の価格で販売するなどの混乱とイメージダウンが起きたこと。
これは、つくりすぎて在庫が積み上がり、結局はあまりもうからなかった「たまごっち」の教訓を生かしすぎたのでは??
さて、子供の悩みを調査してストーリーをつくり、親にもウケのよい妖怪ウォッチ。
最後にもうひとつ懸念をいうなら、「わかりやすく美味しすぎて、すぐに飽きられるお菓子」になるかもしれない、という点でしょうか。