「発信者情報開示は、いつまでに依頼した方がいいですか」「けっこう前の投稿でも特定できますか」、とよく聞かれます。
誹謗中傷された人、投稿してしまった側の人、両方から聞かれます(投稿してしまった側のことは別の記事【発信者情報開示命令 過去の投稿でも特定されるか】で。)

結論としては、早ければ早い方が無難としか言いようがありません。
投稿から何日以内だったら大丈夫、とは言えないです。しかし、目安が全くないと回答の意味がないので、だいたい投稿から1カ月程度が目安と伝えています(もちろんSNSやウェブサイトの種類によりますが)。

ログの保存期間が3カ月だから、3カ月前まで特定できるという情報もありますが、正確ではありません。
3カ月は、ソフトバンクやジェイコムのログが残っている期間です。開示請求は、爆サイやX(Twitter)に開示請求をし、その回答を待って、さらにソフトバンクやジェイコムにログの保存を依頼します。そして、ソフトバンクやジェイコムがログを探して特定する時点で、3カ月以内である必要があります。

開示請求書は、依頼を受けてから早ければ2営業日~4営業日には完成して発送します。ただ、開示請求書を送って、その回答があるまで2~3週間かかります。裁判が必要なSNSは、裁判の日程を決めるのですが、海外法人だと裁判の日程は概ね1カ月に指定されます。有名な海外法人は日本の登記がされていますが、それでも期間は短縮されたと思いません。

請求者側以外の事情で待つ期間が非常に長いし、ソフトバンクやジェイコムが、ログを探す日数も必要です。そのような期間を考慮すると、投稿から1カ月が限度かなと思います。

令和4年(2022年)10月1日以降は、手続きが簡易になった、ログの保存期間は考慮しなくて良くなったという情報もあります。提供命令という手続きです。しかし、実際に手続きをしてみると、結局、それほど早くなった気はしません。色々な所で待機期間があるし、むしろコンテンツ側とプロバイダ側のやりとりがあり、申立人側で認知できない事情なので、より気持ちとしては焦ってしまいます。ウェブサイトの種類によっては提供命令でマシになったものはありますが、全体として少数です。

また、多数の事件を処理する中では、ヒューマンエラーもあります。コンテンツ側にIPアドレスを開示してもらい、それを元にログを検索しても見当たらないので、再度、コンテンツ側にIPアドレスが間違っていないか確認をしてもらったところ、当初のIPアドレスが間違っていたこともあります。新たに正しいIPアドレスを開示してもらい、それをプロバイダ側に伝えて、ギリギリログの保存期間に間に合ったということもあります。

この案件は、コンテンツ側もプロバイダ側も、郵送しか窓口がありませんでした。両方とも有名なIT、通信企業なのですが、メールも電話番号も教えてくれません。そして、その対応は、普通で、メールや電話でやりとりできるコンテンツやプロバイダは稀です。このようなやりとりをするだけで、2~3週間経過するし、それが原因で、ログが消えてしまっても消えたログは復活しません。

本当に待っている期間が長いし、請求者側では何ともしようがない事情で待つ期間があるので、早ければ早い方が良いという回答になってしまいます。