身寄りのない死亡者の財産を、障害者支援施設が相続した事例
ざっくりした事案は、以下のとおり。
Yは中度知的障害者。30年以上、障害者施設(法人X)で生活。
死亡前20年間は、身体障害も加わり車椅子。
死亡前の5年間は寝たきり。
Yの厚生年金が貯まっていく。
Yは死亡したが、相続人なし。
Yの死亡時の預金は2200万円。
法人Xが、相続財産を受け取る申立を裁判所に申請。
相続人ではない者が、相続人として財産を受け取ることはできません。
しかし、相続人が誰もいない場合、特別の縁故がある人に相続させる場合があります。特別縁故者の制度です。
相続人が誰もいない場合、最終的に遺産は国が取得することになりますが、国が取得するよりも被相続人と関係のある人が受け取ったほうが良いんじゃないかということで出来た制度です。
ただ、この制度を利用するためにはけっこうな手間がかかります。どこからともなく相続財産管理人が現れることはないので、申立てる必要がある人が申し立てないと、裁判所は選んでくれません(検察官も何故か申立て出来る規定になっていますが、検察庁に頼みに行っても多分申し立てはしてくれないと思います。)。
この申立てのために弁護士に依頼したり、さらに相続財産管理人の費用も納める必要があります。金額は何とも言えませんが、最低20万円~不動産があれば100万円ぐらい。これらの費用を負担しても、裁判所が特別縁故者として認定してくれるかどうかはわかりません。
また、施設側としては、長年献身的な介護をしてきたってことをどのように立証するのかの問題があります。実際に介護の現場で活躍していた人も高齢になるだろうし、離職率が高ければ介護をしていた人の供述も得られないことになります。
申請のハードルは高いですが、身寄りのない死亡者は増加するだろうし、今後もこのような事例が増えれば良いと思います。
本件では、2200万円全額について、法人Xの相続が認められています。